ライブウォーカー バンドマンに捧げる不定期コラム

KAJUE日誌 -とある音楽雑誌の廃刊記- 最終号

倒産への軌跡 〜朝のヒステリー猿園〜

 

前回はこちら

 

前回まで「音楽フリーペーパーKAJUE誌」を通して見る、音楽業界の内情をお話してきましたが、シリーズ最終回はKAJUE誌廃刊への軌跡+αをお話しようと思います。

 

一時は業界ナンバーワンを誇ったKAJUE誌。やがて、インターネットの急激な発達にともない音楽業界の収支バランスが崩れると、その恩恵にあずかっていたKAJUE誌を発行するG社は壊滅的影響を受けます。

必要なのは紙媒体依存からの脱却。しかし、KAJUEブランドというプライドと意地、そして責任のなすりつけ合いで一向に進まぬインターネット対策

 

早急に「音楽業界の外」から金を持ってくることが求められるも、外の世界とコネクションを持てる、唯一の希望であった(新人)Kは、早々に見切りをつけ退社済。

 

あせる社長、この期に及んで新戦力を募集

 


大手広告代理店A○Kのリストラ組を採用 → 腐っても一流広告代理店。その仕事の堅さゆえ、オールぬるま湯全身浴の音楽メディアとは水と油 → 戦力外。

 


映画業界を渡り歩いてきたと自負するおじさんを採用 → 毎朝、毛沢東の肖像に合掌。「打倒・日本政府! 総理をぶっ○○せ!」と高らかに中国共産党テ○リスト宣言 → 戦力外。

 

いよいよ会社は自滅モード。

 

基本給は30〜50%カット。さらには、基本給の概念を覆す「入金額次第での変動制基本給」が発動。これにより、朝礼はヒステリー猿園化

 

この間、コンサル名義の自己啓発マンが参入。音楽業界に全くそぐわぬセミナー、カウンセリングを展開。何も実らず、金だけをぶんどり去ってゆく。ついには、月給5万円=メキシコの平均月収と並ぶエキセントリックな事態へ。

 

どれだけ多くの(無駄な)抵抗をしたことでしょう…。

 

KAJUE倒産。

ヒモのワタクシを社会復帰させてくれたKAJUE。一抹の夢(未だ覚めない悪夢)を体験させてくれたKAJUE。

 

これらの体験から、明日を夢見るミュージシャンへ一言、言わせていただきたい。

 

ライブや制作を一生懸命やっていれば、いつかレーベルやメディアが拾ってくれて上手くいく、と思っているのは自傷行為だよ!

 

2000年以降、レーベル、メディアには、ミュージシャンの発掘や育成にかける予算がなく、ほとんどの関係者はライブハウスには来ていません

 

いまや、9割が出来レースの業界事情

 

だからと言って、過度なDIYや、うさんくさい自己啓発ノウハウにハマってしまうのも危険。その頑張りアピールは痛すぎる!(自分語りとか、決意表明とか)

 

今の時代、メディアはSNSの一部くらいに扱うのが妥当。音楽メディアの敷居は海抜ゼロメートル地帯並みに低いです。それゆえ、送付資料や応募の類も気分でピックアップしてる程度。ほとんど見ていないので、直接、その足で売り込みにいくのがベスト。

 

しかし、それすらも面倒くさいというアナタ! そんなアナタは、ヒモになろう

 

冗談ではなく、身一つで稼ぐヒモには、相当なメンタルとスキルが必要です。飼い主様を満足させる献身性、巧みな人心掌握術、そこにいるだけで愛されるカリスマ性。これ、トップミュージシャンの性質と全く同じ!

 

頑張っているのに認められない、などという腐ったメンタリティーが生じる前に、「意地もプライドも捨てて生き抜くしたたかさ」をヒモ業にて学ぶべし。

 

これまでのワタクシの人生、ならびに音楽雑誌「KAJUE」での経験を経て、たどり着いた一つの答え、それは…。

 

ヒモは偉大!(ヒモでない今のワタクシの意見はなんら役に立たない)

 

〜おしまい〜

 

創刊号「ようこそKAJUEへ」〜ヒモから音楽雑誌の世界へ〜

第2号「テリトリー争い」~インターナショナル烏合の衆~

第3号「新人くんのお仕事」〜Kの覚醒、快進撃〜

第4号「混沌とした日々」〜ホモと蟷螂拳と私〜

最終号「倒産への軌跡」〜朝のヒステリー猿園〜

 

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企画&ライター 浅井陽 - イラスト担当:こむじむ

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