LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.52

下北沢CLUB251

下北沢CLUB251について
下北沢南口に1993年11月オープン。数多くの大物バンドを世に送り出し、レジェンドから新鋭アーティストまで出演する下北沢でも指折りの歴史と実績をもつライブハウス。近隣に系列音楽スタジオANDY'S STUDIO、スタジオTRI-TONEを運営し、ミュージシャンサイドからの支持も非常に厚い。コード進行を店名由来とする「CLUB 251」は『はじまりの場所』であり、世代を超えて音楽を紡ぐライブハウスシーンの生きた系譜である。
下北沢CLUB251へのお問い合わせ
下北沢CLUB251公式サイト
世田谷区代沢5-29-15 SYビルB1F
TEL:03-5481-4141
ブッキング・イベント募集中

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 下北沢CLUB251編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

下北沢CLUB251ブッキング 有馬豪純氏

本日は下北沢のCLUB251(ツーファイブワン)ブッキング担当スタッフに有馬豪純さんにお話をお伺いします。下北沢でも指折りの有名店ですがオープンまでの経緯をお聞かせください

1993年11月にオープンで、来月(2016年)から24年目です。実は、僕は22歳で、お店より若いのでオープンまでの詳しい経緯というのは、あまり詳しくないんですよ(笑)。

お店の歴史より若いスタッフは、このインタビュー企画史上初めてです。

だから、あまり下手なこと言えませんが(笑) でも、自分なりの思いを伝えたいと思います。

CLUB 251は大物ミュージシャンが育つハコの印象があります。

そうですね。BUMP OF CHICKENTRICERATOPSなどもここで育ったと聞いています。BUMPが、千葉から出てきて、東京で初めてやったのが251だったそうで、当時の話では、千葉の地元からお客さんが大勢詰めかけて来ていたみたいです。大御所だと、サンハウスの柴山俊之さんやROCK'N'ROLL GYPSIES(ルースターズメンバーによるバンド)も出演してくれています。

RIZEのベーシストkenkenもCLUB 251がデビューだそうですね?

とあるテレビ番組の『思い出の店』のような企画で撮影に来ていたようで、僕が気付かないうちに251がニュースに出ていました (笑)。16歳の時の初ライブがここだったようです。

多くのバンドを輩出し、大御所のミュージシャンも出演している理由はどういったところだと思いますか?

九州は日本語のロックンロール発祥ともいわれているほど70年台からロックが盛り上がっていた場所で、その九州と下北沢のつながりが強いと聞いています。CLUB251の初代店長も熊本出身ですし、他にも下北沢の有名なハコに九州出身者がいて、そんな縁で多くのロックバンドが出演してくれたところから始まっていると思います。

有馬さんからすると、かなり上の世代の時代からの流れですね。

はい、僕の上の上の、そのさらに上の代ぐらいから出演してもらっています。そんなバンドに憧れたバンドマン、そして、さらにそれらのバンドに憧れた世代が出演してくれて、なかにはビッグになるバンドが出てきて、ライブハウスの伝統系譜のようになっています。

僕より下の若い世代にしっかり繋げていきたい

そんな歴史あるライブハウスの今後のビジョンをお聞かせください。

僕自身、まだまだ勉強中なので、将来をどうこう言える立場ではないのかもですが、あえて言わせてもらうならば、今話したような流れや系譜を絶やさず、僕の下の世代、もっと若い世代にしっかり繋げていきたいですね。僕より251を知っているバンドがたくさんいるわけですが、ここから巣立っていったバンドも、ずっとここでやってくれているバンドも、いつでも演奏できる場所でありたいと思っています。

世代を越えて交流できる場所はすてきですね。

そうなんです。なにより、店長を含めスタッフの全員が、僕より10~20歳上なんですよ。父親ぐらいの世代の人もいるので、おのずと様々な世代の意見や考え、というのを勉強できますね。まあ、その分、何かあると僕が真っ先に狩り出されるんですけどね(笑)。

この取材もそうですね(笑)。

はい。いや、すごいうれしいことですけどね(笑)。

今日は、ライブハウスの経営的な話も少し聞かせてください。現状、業界の競争も加熱していて、あまり景気のいい話はないようですが、ここ最近の、お客さんの入り状況などはどうですか? 

業界が下火だと言われていますが、僕としては、それはライブハウスに来るお客さんの数自体が減ったのではなくて、お客さんを呼べないバンド、人気のないバンドが増えてしまったからではないかと思います。実際に人気のあるバンドの集客はすごいわけですから。

なるほど、集客力のないバンドが増えてしまっていると。

あきらかに、動員を増やすことを意識しないバンドさんが増えたと思います。せっかくライブをやるのに集客の努力をしない…。

そういったバンドは、お客さん相手ではないとなると、どこにターゲットをさだめているのでしょう?

いや僕もちょっと不思議に思っているんです。もともとライブハウスは演奏が良かったり、人を惹きつけるものがあったり、動員力のあるバンドしか出られない、っていうものだったじゃないですか。でも、僕と同世代あたりの若いバンドって、いまやどこのライブハウスでも出られるので、バンドと動員は関係ない、というのが若手の感覚なんでしょうね…

音楽をライブで楽しむ人の数は減っていない

若手バンドが動員に対する意識が低いのはよろしくないですね。

はい、そういうスタンスのバンドが増えてきた結果、「ライブハウスには人が来ない」と思われているんだと思います。でも人気のあるバンドのライブには、ものすごい数のお客さんが集まるので、音楽をライブで楽しみたい人の数は減っていないはずです。なので、ライブハウスに来る人が減っている、とすればそこに出演しているバンド側の問題もあるかと思います。それでも「ライブハウスのせいだ!」と言われたら、もう謝るしかないですね。やり場がない(苦笑)。

逆に言えば、今でもちゃんとやっているバンドにはお客さんが付くということですね。

そこは変わってないと思います。やる気があって、かっこいい音楽をやってるバンドは友だちもたくさんいるし「みんなでワイワイしようぜ」という意気込みがライブから伝わってきます。

でも、楽曲や動画をネットで配信するだけで、ライブハウスには出ないというバンドやアーティストは増えていますよね?

そうですね…。実は僕自身も、音楽表現の場としてはライブハウスに限らず、動画やネット配信でもいいと思ってる部分はあります。どのライブハウスにも出られる時代となっては、ハコや場所にこだわる意味が薄れてしまっているので。そういう価値観をもっている若い世代は多いと思います。

う〜ん…。それでもバンドは生ライブで味わってほしいですね。

やっぱり生のバンドが一番かっこいいですからね。せっかく(笑)、バンドが好きなようにライブハウスに出演できる状況になっているのに、ライブハウスを利用してくれないバンドが増えていくとしたら、ライブハウス側としても改善すべき問題があるのかなあとも思っています。

ライブハウス側の問題点、くわしく教えてください。

僕らの世代のバンドはみんな思っていると思いますが、ブッキングの人って偉そうな人多いじゃないですか(笑)。それは違うかなって思っています。ライブハウスとバンドは対等であるべきで、高みを志すバンドに、ブッキングやスタッフが上から目線であれこれ言うのは何か違うと思っています。その意見がそのバンドにとって正しいとも言い切れませんからね。

ライブハウスは「使ってもらってなんぼ」

ブッキングマネージャーというのは、昔からそのようなスタンスですよね…。

ライブをして怒られる、次回がんばろう…、というのは、正直、今の世代には無いと思います。「じゃあ、他のライブハウスに出るよ」となってしまいます。それより、店をきれいにして、接客のクオリティも上げて、いろんな人が気持ちよく楽しめる場所にすることが大事だと思うんです。バンドにも、お客さんにもライブハウスは「使ってもらってなんぼ」なので。

とても新鮮な考えです。世代間の感覚の違いを感じる人も多いのではないでしょうか。ところで、有馬さんもバンド活動をされているのですか?

高校時代に軽音部に入りました。でも、その頃から裏方の仕事が好きで、ずっとバンドのスタッフをやっていました。自分でバンドをやるよりをサポートするほうが楽しいなあって思うんですよね。

バンドにとって頼もしい存在ですね。CLUB251に入るきっかけは何だったんですか?

高校3年生の冬頃に、バンドのスタッフとして251に出入りしていました。あるライブの打ち上げのときに、当時の251の店長に「おまえ、高校卒業したら何すんだ?」と尋ねられ、「まだ何も決まってないです」と答えたのがきっかけです。

バンドをサポートする真摯な姿勢が当時の店長の目にとまったのですね。

それまで、店長とは話したことがなかったので、めちゃめちゃ怖かったですね。声をかけられたときは「ええ、何か粗相をしちゃったかな?」ってビビっちゃいました(笑)。すぐに面接をしてもらって、そのままここにいる、という流れです。あ、ちなみにその時の打ち上げはソフトドリンクですよ(笑)。

それでは最後にCLUB251からメッセージをお願いします。

地方のライブハウスに行った時に、東京のライブハウスとの違いを強く感じました。地方ではとにかく人があたたかくて、スタッフの1人1人から「来てくれてありがとう、また来てね」という気持ちが雰囲気から伝わってくるんですよ。これは東京にはない感覚だと思いました。だから、僕は東京出身だからこそ、東京・下北沢のCLUB251を、そういうあたたかいお店にしたいと思っています。また来たいと思えるライブハウスでありつづけるよう努めますので、ぜひここで好きなバンドのライブを思いっきり楽しんでいってください。

本日は、若い世代のとても貴重なお話をありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年11月)

インタビュー特集一覧(バックナンバー)

バンドメンバー募集のメンボネット ミュージックジョブネット
下北沢(世田谷区)
小田急線で新宿から11分、京王井の頭線(急行)で渋谷から4分、吉祥寺から13分とアクセス至便なロケーションにあり、ライブハウスやライブバー、音楽スタジオ、小劇場などが密集する都内でも有数のサブカルチャー発信エリア。2017年度に小田急線の複々線化を完了、新駅舎は2018年度に完成予定。