ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.104

天王洲アイル KIWA

KIWA TENNOZ について
2018年6月、天王洲アイルにオープンしたアーティストの感性に呼応するクリエイティブ・ライブスペース。運河に囲まれたアートエリアの新しい音楽シーンを創造発信する。ステージには木目が美しいスタインウェイピアノA188完備。運営母体のオアシスは音のプロフェッショナルとしてPA音響事業、リハーサルスタジオ「studio home」、マスタリングエンジニア田中三一氏が在籍するレコーディングスタジオ「studio ATLIO」の運営も手がける。天王洲アイル駅から徒歩5分、ボンドストリート沿い。
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天王洲アイル KIWA 公式サイト
東京都品川区東品川2-1-3
TEL:03-6433-1485
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ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 KIWA TENNOZ 編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

Oasis Sound Design代表 金森 祥之氏 / アシスタント 工藤 優氏 (左)

二子玉時代からサウンド&ライティングデザインをさらに充実

本日は、天王洲アイル「KIWA TENNOZ」のオーナーで、スタジオやPA事業を手がける有限会社アオシスの代表でもある金森祥之さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか?

2018年6月1日オープンです。「KIWA」というブランドは2011年に「二子玉川KIWA」からはじまって、昨年こちらの天王洲アイルに展開してきました。現在、KIWAがあった二子玉川の場所では、知人のプロデューサーが「ジェミニシアター」というライブハウスを運営しています。

二子玉川時代からミュージシャンには有名な箱でした。「KIWA TENNOZ」がスタートした経緯をおしえてください。

天王洲アイルのTMMTで開催していたアーティストイベントで、寺田倉庫の中野善壽社長(当時)に声をかけられたのがきっかけです。ぼくはPAとして現場にいたのですが、まだスケルトンだったこの物件を見せていただいて「この場所、どう思います?」と聞かれたので、「こういうライブハウスやったらおもしろいのでは?」と提案したところ、「おもしろいね。じゃあ、おねがいします」というような感じでその場で決まりました。

ものすごく豪快なエピソードですね。

まあ、そこからが大変な道のりだったのですが(苦笑)。

「KIWA TENNOZ」のオープンにあたって、どのようなライブハウスを目指したのですか?

二子玉川時代には実現できなかったこと、とくにサウンドデザイン、ライティングデザインはさらに充実させようと思いました。といっても、このキャパと環境下で出来ることを最大限に追求したという感じです。

とても充実した設備で、都内でもトップクラスに洗練されていると思います。

ありがとうございます。小箱だとしても、PA専門事業者の運営するライブハウスとしてクオリティーは維持せねばなりませんからね。ほかのライブハウスにPAで入ることもありますが、巷には(設備面で)なかなか厳しいなぁ、という箱もありますので・・・。

二子玉川から天王州アイルへの移転にあたってアップグレードされた感じ?

そうですね。でも、これまでのノウハウや基本的なデザインコンセプトは、二子玉川時代から受け継いだところもたくさんあるので、常連のお客さまからは「なるほど、KIWAだね!」ともおっしゃっていただきました。

「KIWA TENNOZ」のサウンド的な特徴をおしえてください。

ご覧のとおり、スピーカを高い位置から吊るしているので、このキャパにしては客席からの距離が確保できています。そこにデジタルディレイでスピーカーから出力タイミングを調整することで、音像のコントロールが可能です。

音が出るタイミングの調節で、そのように変化するものなのでしょうか?

ざっくりいうと、ディレイが早い(遅れが短い)と音像が広がり、遅らせると音がコンパクトに収まります。楽曲や演奏内容に合う最適なタイミングに調整して、理想的なサウンドを作ります。

PAは伝統を守り受け継ぎ、自社エンジニアが担当

演奏しているときのステージの中音はどうでしょう?

平面反射、背面反射をうまく利用して、デッドすぎず、鳴りすぎず、ドラムならば叩いたら叩いた分だけ返ってくるセッティングです。演奏者本人の実力通りの音がモニターできているという感じ。出演されているミュージシャンからは演奏していて気持ちいいと好評です。

PAはKIWAのエンジニアさんに担当してもらえるのですか?

はい、つねにクオリティはコントロールしたいので、当社チーフクラスのエンジニアが入れ替わり立ち替わり担当します。私たちのサウンドポリシーがあるので、外部にお願いすることはほとんどありませんね。自社のエンジニアで伝統を守り、受け継いでいます。

ここまで完璧ですと、経営面での採算が気になる方も多いと思いますが…。

正直、折り合いのつかないところはあります。キャパからしてどんなに入っても収入的には上限がありますからね。そのあたりは、良い音を出していれば、(箱に)お客さまがついてくれたり、メディアに取り上げてもらったり、会社の評判にもつながるので、広告宣伝費の一貫として割り切っています。

PA事業も手がけられていますが、KIWAのような小箱でのPAについて特徴をおしえてください。

あたりまえですが、ステージからの距離がすごく近いので生音がメインです。ドラム、ベースアンプ、ギターアンプはほぼ生音です。PAは、そこからドラムを軸として、全体的に音をどう馴染ませていくかというところで、必要な成分を追加していく役割です。

大きな会場のPAとは違うものですか。

大きい会場ではPAを経由したスピーカーの音に支配されていて、極端な話PAのフェーダーで音楽を作っている、と言っても過言ではないかもしれません。だから、大会場のライブは、多少演奏の「アンサンブル」が暴れていても問題なかったりします。

逆に小さい箱では「アンサンブル」の重要度が高くなるということですね。

そのとおりです。それと箱の規模に関わらず、PAではどうにもできない部分はあります。たとえばアコースティックギターのストロークとアルペジオで「音量が違いすぎる〜」ということがよくあります。ライブをされる方は、ピッキング、ボリュームペダル、エフェクターのセッティングで、どのような環境でも安定した出音を出すようなことは覚えたほうがよいと思います。

さまざまな環境下で、どのように音が聞こえるかをコントロールする必要があるわけですね。なかなかむずかしそうです。

そのあたりは、海外ミュージシャンのビッグネームとも仕事をさせていただく経験から、やはり向こうのミュージシャンはものすごくバランスがいいですね。日本人だとベテランと言われるミュージシャンでも…。

海外のミュージシャンの方が、鳴りや反響について敏感だと?

はい、とくにヨーロッパは石材の建築が多いから、音が交錯して下手すると「グチャグチャ」になってしまいます。音の鳴りについては研究せざるを得ない環境だと思います。が、そもそも、もっと根本的な音楽に取り組む姿勢が違うのかもしれない。PAで入ったときに「音は俺たちがコントロールするから、PAよりもショーを楽しんでくれ」と言われたこともありましたから。

熱意ある地方に、私が伝えられるノウハウを伝授したい

つづいてKIWAとしての今後の展開やヴィジョンをお聞かせいただけますか?

最初のライブハウスがキャパ100人、ここの2つ目で120~150人になりました。つぎが何人になるかわからないけれど、大きい方向は目指しています。できれば300人くらいのキャパでやりたいですね。それからKIWAを全国展開したいんですよ。

フランチャイズ的に事業拡大していきたいということですか?

いいえ、いわゆるチェーン店のようなものではないし、そこで大きく儲けることは考えていません。PAとして全国をまわっていると、地方のライブハウスには、音楽で地域を盛り上げたい、音楽が好きという一念で活動されている方にお会いすることも多いです。でも資金面や運営ノウハウ、情報が足りない。店長を任されていてもオーナーシップとは程遠い状況の方もいて。そういう人たちにKIWAのノウハウを伝授していくようなイメージです。

ライブハウスはどうしても大都市に集中しがちですが、地方に着眼された理由は?

地方で、ある程度のキャパがある会場って自治体管理の多目的ホールばかりで、斬新なデザインで思い切った運営ができるところは少ないんですね。そこから世界と張り合えるような、音楽文化を生み出すのはむずかしいと思いませんか? そこで、熱意ある地元の方に私が伝えられるノウハウを伝授して、自分で切り盛りしてみてほしい。ある地方にいったら「あそこには立ち寄っておかなきゃ!」という箱を作ってもらいたいなぁと。

とくに地方都市では、小箱でも経営的に厳しいところがありますよね。

うちのやり方の例では、ライブハウス運営だけの収支にこだわらず、「音響」というスキルでPAに関連する事業と連結しています。わかりやすくいうと、PAや音響事業で儲けさせていただいて、ライブハウス事業に関しては、弊社の技術や心意気や見せる場所、実稼働しているショールームとしての役割を担っています。

一緒に公演を打つ以上、ミュージシャンと同じ立場です

金森さんの経営者としての才能により実現しているとも思えます。現状は「ミュージシャンがお客さま」という箱も…。

もちろん、そのようなライブハウスもたくさん知っています。良くない状況です。いちばん残念なのは、経営的に余裕がないと設備投資ができず、クオリティーコントロールができないので「音楽表現の質」が変わってきてしまうということです。そういうライブハウスが増えると、業界全体のレベルが下がったと言われかねません。だからこそ、こういう自分たちの運営の仕方やノウハウなどを、全国でも広めていきたいわけです。

すばらしいと思います。業界にとっても、ミュージシャンにとっても魅力的なお話です。ぜひ実現していただきたいです。

もちろん事業継続のために収益は必要ですし、先ほども言ったように大きな利益があがるわけではありませんが、私たちはプロとしてミュージシャンと同じ立場です。一緒に公演を打つと決めた以上、公演の動員が思わしくなければ、負担しなければいけないし、売上が上がったらシェアしていきましょう、という気持ちです。

金森さんが、PA、ライブハウス事業をはじめることになったルーツをおしえてください。

ハイファイオーディオが趣味だったことですかね。小4のころにはスピーカー自作キットでスピーカーを組んでいました。本当は、有名なメーカーの大きなウーハーがついているヤツが欲しかったのですが、高くて買ってもらえなかったので (笑)。

小学生のオーディオマニア!

それから、高校時代にシンセサイザーと出会って、「これはおもしろい」と思いました。音楽というよりは、「波」や風」などの自然音や、さまざまな効果音が出てくるのが楽しくて、この方向に進むことになったきっかけだと思いますね。

当時から、サウンドそのものに対する興味をお持ちだったのですね。

そう思います。高校卒業後は音響の専門学校に進み、その後「サンフォニックス」という音響の会社に入ってエンジニアをしていました。1984年から12年勤めて32歳の時に独立しました。エンジニア業を続けながら2011年にKIWAを設立(二子玉)して、現在に至ります。

ありがとうございます。これまでも、これからも音響業界一筋ということですね!それでは最後になりますが、KIWAからメッセージをおねがいします。

二子玉川KIWA時代につづいて、すばらしいミュージシャンが出演してくれています。良質の音楽を、良質のサウンドでご堪能ください。「ここに来ればハズレはない」、そのクオリティに責任を持っています。このエリアも、オリンピックに向けてますます賑わっていくと思います。ライブハウス以外にも、アートギャラリー、レストランやカフェ、雑貨店、スケートボードパークなど楽しいスポットがたくさんあります。多目的な遊び場として、ぜひ訪れてみてください。

東京ウォーターフロント、天王洲アイル発の音楽・カルチャーにますます注目が集まりそうですね。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽 BLOG / Twitter(取材日 2019年7月)

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天王洲アイル(品川区)
東京湾ウォーターフロント、運河に囲まれた約20万㎡の島(=アイル)。江戸幕府の第四台場、近代は流通倉庫街、現在は「アートの街」へと変貌。東京モノレールとりんかい線が乗り入れる。りんかい線の副駅名は「寺田倉庫本社前」。水辺の倉庫群をリノベーションしたアートギャラリー、イベントスペース、カフェやレストラン、ショップが建ち並ぶ。
天王洲アイルボードウォーク
水辺の散策が心地よいウッドデッキの遊歩道。シーフォートスクエア周辺の第1、キャナルガーデン側の第2、天王洲運河に面した第3、3つのボードウォーク(水辺広場)がある。運河沿いのキャナルサイドでは春夏秋冬で「天王洲キャナルフェス」を開催。台船ライブや映画祭、マーケット等イベントで賑わう。
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