ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.51
渋谷GARRET
- 渋谷GARRETについて
- 渋谷を代表するロックの箱CYCLONEに続くライブハウスとして、渋谷屋根裏(1997年〜2013年)跡地に2013年9月オープン。「ライブハウスは、音楽シーン発信の起点であり、やるべきことはバンドを1から育てていくこと」。そう語るのはCYCLONE&GARRET店長の三浦直仁氏。世にライブハウスとは名ばかりの貸しホールが増殖する中、ハコとして主義主張をもち、確かな泥臭さをもって、筋の通ったものを作っていく。アンダーグラウンドとオーバーグランドの架け橋となるハコ、それが『GARRET udagawa』だ。
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渋谷区宇田川町13-16 国際ビルB館B1
TEL:03-3463-0069
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ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 渋谷GARRET編
このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
渋谷GARRET店長/Obrienレーベル代表 三浦直仁氏
本日は渋谷GARRETの店長、三浦直仁さんにお話をお伺いします。GARRETのオープンはいつですか?
2013年10月に当社グループのサイクロンに続く2つめのライブハウスとしてオープンしました。
サイクロン(渋谷CYCLONE)とGARRET、それぞれのカラーについて教えてください。
サイクロンはサウンド的にも激しいバンドが多いので、GARRETではギターロックやメロウな歌ものだったり、ストレートなロックとかそういうカラーリングにしつつ、屋根裏があった場所なので、その流れのテイストなども残したいと思っています。
この場所は「渋谷屋根裏」があった場所でも有名ですね。
そうですね。ご存じの方も多いと思いますが、屋根裏の跡地にオープンしたのがここGARRETです。
屋根裏の頃より、相当出音が良くなっています。音抜けの良さと質感に驚きました。
音響関連の機材も含めてフル改装しました。サイクロン、GARRETともに音響照明のレベルに関しては、PAエンジニアの「腕」も含めて、都内の200〜300キャパの中では一位、二位を争うくらい自信があります。
リハーサル中に見させていただきましたが照明が絶妙でしたね。
照明については、ムービングライトや新しいLEDのものと昔ながらの白熱灯の照明などいろいろ使い分けています。LEDも良し悪しがあって、古い昔の照明がもつ暖かみを残したいので。
屋根裏の跡地にGARRETが入るあたりの経緯を教えていただけますか?
渋谷屋根裏が残念ながら経営不振でクローズすることになって、元々サイクロンは屋根裏と同系列のアンチノックグループだった経緯もあり、どうせ屋根裏が無くなってしまうのなら「其処にあった想いや意志も継承しよう」といった意味も込めてサイクロン2号店となる新しいライブハウスとしてスタートしよう、という話になりました。
当時はサイクロンもアンチノック系列だったのですか?
はい、その後サイクロンはグループから独立しましたけど。
三浦さんがアンチノックグループに入ったのはいつ頃ですか?
23歳(1997年)の頃、アンチノックグループだった高円寺GEAR(2009年11月閉店)に入ったのが最初です。GEARで店長をやって、数年後、新宿アンチノック店長、その後サイクロンの店長となりました。
理想を目指すため、ハコを買い取る形で独立
アンチノックの系列から独立したあたりの話をお伺いしてもよいですか?
(アンチノック系列時代の)サイクロン店長の頃はグループの統括的なポジションにいて、各店の立て直しに現場に行っていたんですよ。でも、経営者サイドとうまく噛み合わない事もあって、どうにもしょうがない、という状態になってしまったので。
自分の理想を目指した?
はい、自分の箱を作るしかないかなと。それで独立しました。
でも、(対外的には)サイクロン自体に変わりはないですよね?
サイクロンを自分で買い取る形にしたので、バンドやお客さん側からは何も変わりはありません。
実際には三浦さんにオーナーが代わっているのですよね。
はい、そうです。店をそのまま受け継ぐ形にしたのはバンドさんたちに対する自分のこだわりです。雇われ店長が独立するからと言って、新しい名前のライブハウスをつくっていたら、それまで出演してくれていたバンド側が迷ってしまうじゃないですか。
はい。「新しいハコを作ったのでこちらで…」という話はよくあります。
バンドにとっては、独立とか経営的な問題は関係ないですからね。そういう、こちらの事情で「新しいハコの方でやってくれ」なんてことをいっていると、なんかスッキリしない部分が残ってしまうものなんですよ。まあ、せっかく独立したのだから、自分で(名前を)決めた新しいハコでスタートしたいという気持ちもわかるのですが。
なるほど、それであえて買い取りという形でサイクロンとして継続したのですね。
長い間、温めてきたハコで、気持ちを持って出演してくれるバンドもたくさんいるので、関わっているバンドがそのまま変わらず出演できるようにしようと思ったわけです。
やるべきことは0から始まったバンドを1から育てること
GARRETとサイクロンの特徴や目指している方向について教えてください。
ライブハウスというのは、音楽業界のなかで、すべての基本となる底辺(ボトム)なんですよ。だから、やるべきことは0から始まったバンドを1から育てること。そういう意識をもって、確かな泥臭さを持ってやっています。
たしかに、ライブハウスは音楽発信のスタート地点ですね。
そのためにも、まず自分たちライブハウスが確固たる主義主張を持つべきです。その時代時代で音楽の移り変わりがあるかもしれないけど、ロックをやる側のスタンスや精神論は一貫して、筋の通ったものを作っていきたい。
ハコとして確固たる主張をもったうえで、バンドを育てていくのですね。
はい、バンドの知名度やテクニックに関わらず、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドの懸け橋となるハコでありたい。運営サイドとバンドとの関わり合い方は、他店様とは違うやり方をしているという自負がありますよ。ただの「ハコ貸し」ではなく、音楽シーンを発信していく場所ですので。
サイクロンのアクの強さは、バンドやお客さんにも十分伝わっていると思います。
サイクロンは、こだわりを持って長い間続けているので、バンドマンの方たちには「渋谷で1番めんどうくさい箱!」と思われているはずです。でも、その点がロックバンドには愛されていると思うし、逆に若いバンドには怖そうだと思われてるかもしれない(笑)。
GARRETの方は新しい箱で、渋谷は競争も激しいと思いますが調子はどうでしょうか?
これからかなという部分も多少ありますが、まずまず、というところです。渋谷は情報を発信する上で特別な場所だと思っているので、将来的には『渋谷のライブハウス=GARRET』と言えるくらいにしたいと思っています。
ライブハウス飽和状態、みんな店たたんで辞めてくれ!
渋谷はこれからも新しいライブハウスがオープンしそうで、競争も苛烈になってきそうです。
正直いったら、「逆に、みんな店たたんで辞めてくれ!」って内心思ってますよ(笑)。音楽が好きでライブハウスを作るっていうのは夢のあることだけれど、現実は飽和状態になってしまって、出演者のハードルがすごく下がってしまっている。
そうですね…。ライブハウスは「誰でも出られる」ものになってしまいました。
ライブハウス側もバンドに媚びているというか、優しすぎます。楽曲や演奏のクオリティを向上させる意欲も努力もないのに、「君たち、いいよねえ」なんて褒めててもしょうがないですからね。結果、バンドのレベルもなかなか上がらない。
現場の真っすぐな意見、その通りだと思います。
バンドもお客さんにチケット代をもらっている以上、もうちょっとプライドを持って意識高くやるようしないとね。ライブハウスがもうちょっと淘汰されて数が減れば、全体的に引き締まって、出演者の質やバンドのレベルも上がってくるんじゃないかな。バンド同士のせめぎ合いで、のし上がっていくという価値観は大事にしていきたいです。
バンドへの真摯な思いが伝わります。三浦さん自身もバンド活動をしているのですか?
はい、高校時代からパンクバンドでベースをやっています。オリジナル曲でライブハウスにも出て、地元茨城県の高校を卒業した後、すぐに東京に出てきてバンド活動を続けていました。そこから、どっぷり音楽人生です。
最後になりますが、三浦さんからバンドマンへのメッセージをお願いします。
パソコンでかんたんに音楽を作ったり、聴いたりできる時代ですが、やはり、バンドの良し悪しというのは、ライブで生身の人間が演奏して放つエネルギー、パッション、精神、それらが折り重なってはじめて決まると思っています。自分の中の音、大事にしているモノをとことん追求して表現するライブを期待しています。女の子にちょっかい出したり、売れたりはその先にあるんじゃないですかね(笑)。本末転倒にならないよう、四六時中、音楽活動に没頭して努力して欲しい。がんばってください。
本日は貴重なお話と、温かいメッセージありがとうございました。
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