LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.77

浅草ゴールデンタイガーは、2020年5月末日をもって閉店しました

浅草 Golden Tiger

浅草ゴールデンタイガーについて

2014年12月オープンした、「浅草ジンタ」リーダー和尚プロデュースするラウンジ&クラブ。浅草の夜に解き放たれた「金虎」は次世代型のキャバレー文化とワールドミュージックのクロスオーバーがテーマ。艶やかなアナログ・サウンドに包まれた懐かしくて新しい空間は、独創性を追求する表現者たちに理想的なホットでミニマムなキャパ。老若男女、ビッグネームから若手まで、さまざまなアーティストが集い、DJイベントやバンドライブ、多彩なエンターテイメントが交差するグローカルな浅草のナイトスポット。

浅草ゴールデンタイガーへのお問い合わせ
浅草ゴールデンタイガー
[閉店] 台東区西浅草2-14-13 マンション西浅草B1
TEL:03-5830-3969

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 浅草ゴールデンタイガー編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

浅草GOLDEN TIGER店長 松本昂也氏インタビュー

本日は浅草ゴールデンタイガー店長の松本昂也さんにお話をお伺いします。新しいお店ですがミュージシャン界隈ではすでに名の知れたお店です。オープンはいつになりますか?

ご存じの方も多いかと思いますが、ゴールデンタイガーは「浅草ジンタ」のリーダーとして活動しているオーナー(「浅草ジンタ」W.Bass&Vocal 和尚)が2014年12月にオープンしたお店で、僕は2016年の3月に店長として入りました。

オープンの経緯について教えてください。

オーナーは10年以上前から「銀幕ロック」というライブバーを経営していました。この物件には「STELLA Asakusa」さんというDJバーが入っていましたが、2014年に撤退されまして、その際に、オーナーのところにステラのオーナーから、居抜きで引き継がないか、と話が来ました。(※STELLAは2015年6月に別の場所に移転オープン)

銀幕ロックは弾き語りやアンプラグドなライブが中心ですよね。

はい。銀幕ロックではバンドライブのような大きな音で演奏ができなかったのですが、オーナーとしては、パフォーマーも含めた浅草のライブシーンを作るために始めたと聞いています。

浅草エリアのライブハウス・バーの取材は初めてですし、確かに「浅草でライブ」というのはあまり耳にしませんでした。

浅草のナイトシーンって、みなさんが思っている以上に昼間との温度差があるんです…。

世界中から人びとが訪れる観光スポットですよね。

浅草は観光地、胃袋産業、もとは娯楽の街という歴史がありますが、若い人がパーティーをしたり、音楽を聴きながらお酒をのんだりというカルチャーがあまりないですし、ちょっと街を歩いてもらうとわかりますが、夜の浅草って意外に閑散としているんですよ。

観光に特化されていて、人で溢れかえっている印象はありますけど。

そうなんです。浅草寺の商店街とか雷門の通りを歩いているのは観光客で、ローカル客はほとんどいません。地元の人たちは、みんな浅草の外に遊びに行っているのかな? 夜遊びという点では、飲み屋に限り盛り上がっているところがありますが。

せっかくの世界的な知名度をもつ街、音楽文化も盛り上げたいですね。

そうですね。ゴールデンタイガーとしては、待ち合わせで一杯飲んで移動とか、たまたまお目当てのアーティストを見に来るとか、そういう「ついで」に使われるだけでなく、ここにみんなで集まるのが目的となるような場所として浅草のナイトシーンを作っていきたい。まずは、そんなお店づくりが第一段階だと思います。

浅草ナイトスポットの中心として立ち続けていきたい

ジャンルやイベントのことについてお伺いします。具体的に出演アーティストについて教えていただけますか。

有名な方で例をあげますと、大貫憲章さん、森雅樹(EGO-WRAPPIN')さん、なかの綾(歌手)さん、ヒップホップ関係ではDJ MASTERKEY(BUDDHA BRAND)さん、DJ TOSHI(ラッパ我リヤ)さん、SHIGEO(ex.スケボーキング)さん、などなど。オーナーがロカビリー畑なのでその世界で大御所のロカビリー系のアーティストも多いですね。大御所のコモエスタ八重樫(東京パノラママンボボーイズ)さんも現役でまわしておられます。

そうそうたるレジェンドクラスのアーティストが名を連ねていて、胸熱です!

若かりし頃は「やんちゃ」、今や「かっこいい大人」の方々にも楽しくライブをやってもらっているという感じです。「ローカルを盛り上げるために」といって、口説いています。タイラダイスケさんなどをお呼びして若い人たちに響くイベントも組んでいますよ。

人脈の広さとブッキングの手腕を感じさせるラインナップですね。

毎週末レジェンドクラスというわけにもいきませんし、著名人のイベントだけが売りというわけではありませんよ。やはり街のカラーが強いですから、いろいろなアーティストの方が浅草という地域に密着したパーティをやってくれています。フロアはお客さんでぎゅうぎゅう、一晩でビール樽がどれだけ空いたんだ、というイベントも多いです。

オープンから約3年ほどですが、すでに際立った存在感を放っています。その鍵はなんでしょう?

もちろん日頃のスタッフの努力もありますが、出演してくれたアーティストがここの評判を広めてくれて、その周りにいる人たちに輪が広がり、そこに「浅草」という地域色を投げ込む。オープンからまだまだ月日が浅いですが、多くの人の化学反応でここまで盛り上がってきたのだと思います。

浅草ライブシーンの中心的な存在となりつつありますね。

そうありたいですね。うちが浅草ナイトスポットの中心として立ち続けていきたいです。他にもクラブやライブイベントをやっているお店はあるので、浅草のお店同士、共存しながら競争していければと思います。

人のつながりが新しい仕事に結びつくことも多い業界ですが、松本さんが人脈を増やしてきた方法を聞いてもよいですか?

過去に渋谷UNDERBARというライブバーでバーテンダーの仕事をしていたことがあるんです。自分もドラマーとしてアーティスト活動をしています。それら様々な縁で、ゴールデンタイガーの店長になったところもあって。すでに知っているアーティストやお客さんがいたことも心強かったです。

先日は「UNDER DEER Lounge」を取材させてもらいました。UNDERBAR出身で活躍される方は多いですね。

UNDER DEER Loungeには、UNDERBARアルバイト時代にヘルプで行きましたよ。店長の多田さんとは今も仲良くさせていただいております。

アナログレコードのすばらしさをみんなに感じてほしい

続いて、サウンド面・音響設備について教えてください。

DJ、サウンドに関しては、オーナーの強いこだわりで「アナログ超重視」です。アナログレコードでいい音楽を流して、そのすばらしさをみんなに感じてほしい、オーナーも僕らも同じ気持ちです。

レコード独特の音の厚みや立体感は快感ですからね。でも、最近はDJもデジタルが多いですよね。

はい、もちろん、PC、CD、USBを使っているからダメというわけではありません。店としてはレコード推奨ですが、音響はそのあたり(デジタル)も考慮しながら、バランスのよいサウンドシステムを入れていますし、DJ用にバースペースに5台のスピーカー、ステージ側にはDJとライブ用に6台のスピーカーを常設しています。

DJ用スピーカーが5つも! 本格的ですね。バンドについてはどうですか?

オーナーが、ロンドンのSt.Moritz Clubという、かなり小さなお店のステージとホールの熱と生感に感銘を受けてつくったので、ここのステージは狭くて、基本的には生音が半分以上のバランスでバンド演奏してもらっています。ジャンル的には、ロック、ロカビリー、ジャズ、レゲエ、スカあたりが多いですかね。たまに大所帯の8人組だと、ホーンセクションはステージ下に降りてもらっています。サイコビリー、ハードロックのバンドもたまに出ていますよ。

生音に強い実力派のバンドが集まりそうです。

逆に、ヘビメタとかハードコアみたいにアンプの音圧(音量)が高くないとカッコよくならないジャンルのバンドはご遠慮いただくこともあります。もちろん、仲の良いバンドもたくさんいるのですが、バンドのパフォーマンスを100%引き出せる環境かどうか、という点も大事にしています。

ところで内装も印象的ですね。居抜きで入ったとのことですが、この内装はあとからコーディネイトしたのですか?

はい、内装やテーブル、椅子などは全部DIYで後付けです。もっとキレイな感じにしてもいいのですが、いい意味で雑多な部分があるのも浅草らしさ、そしてこの店の良さだと思うので、あえてこの感じを維持しています、

雑多な空気と質の高いアンティーク感、いい味が出ていると思います。

ライブハウス然とした所よりも、今は明るくて白い清潔感のある場所が好まれる時代になりました。僕たちは、決してその逆を行っているつもりはないですが、おしゃれ一辺倒な方向にはなりたくない。オーナーのこだわりでもある、昔の良さが見え隠れするライブバー、そんなところを目指しています。

最初は正直、お店の店長はやりたくないなぁって(笑)

松本さんがゴールデンタイガーに入るまでの経緯について教えてください。

僕は出身が浅草なんですよ。高校からドラム、パーカションをはじめて、音楽の世界で成功したいと思っていました。それで、ライブハウスやクラブでバイトしたり、DJをはじめたりするなかで徐々に仕事をいただけるようになり、ミュージシャンとして音楽で食べていけるところまで来ました。

浅草出身だったのですね。地元愛がひしひしと伝わってきていました。店長になる前からゴールデンタイガーのことは知っていたのですか?

知人がこの店のマネージャーサイドのスタッフだったこともあり、以前よりよく飲みに来ていました。1年ぐらいした頃、その知人がここを退職するというタイミングで、オーナーから「うちで店長をやってくれないか?」と声をかけられたのがきっかけです。なので、最初から店長としてゴールデンタイガーで働いています。

ミュージシャンとして生計が立っていた環境で、即断できました?

いえ、クラブでのバイト経験から、店長という仕事の大変さを知っていましたから、最初は正直、お店の店長はやりたくなぁって思っていました。どうみても過酷すぎる(笑)。

何が松本さんの背中を押したのでしょうか?

昔から考えていたことですが、やはり、地元を盛り上げたい、という純粋な気持ちです。20歳ぐらいから、自分でDJセットを買い、地元のバーなどを貸し切り、毎月のようにパーティーも打っていましたし、そもそも音楽が好きですから。なので、これは巡り巡って浅草を盛り上げるための大きな仕事なのかな、と思っています。

地元愛がつないだ縁、大切にしたいですね。それでは最後ゴールデンタイガーからメッセージをお願いします。

浅草といえば観光地というイメージを持たれると思いますが、このインタビューを通じて、ナイトタイムにも、音楽好き、お酒好きにはたまらない楽しいお店があることを知っていただきたいです。店づくりは街づくりにつながる、そういう気概をもって、ゴールデンタイガーから浅草のナイトシーンを盛り上げていきますよ。ぜひ「夜の浅草」に足を運んでみてください。

ゴールデンタイガーを中心に、浅草音楽文化のより一層の発展を願っています。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2018年1月)

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浅草(台東区)
隅田川のほとりにある東京の下町、浅草寺の門前町として栄えてきた「浅草」。吾妻橋近くの東京メトロ銀座線、東武スカイツリーライン、都営浅草線、国際通り沿いのつくばエクスプレス、4つの浅草駅がある。浅草のシンボル「雷門」前はいつも記念撮影で大賑わい、世界中から多くの観光客が足を運ぶTOKYO観光の人気定番スポットだ。庶民の生活に笑いと活気を与え、多くのスターを生み出してきた大衆芸能の聖地。今宵は、電気ブランで浅草ロマンに乾杯。
銀幕ロック
浅草ジンタ和尚がプロデュースする浅草のロックバー。浅草六区通りの路地裏、いっぷく横丁の黄色い看板が目印。ノスタルジックな店内で弾き語りやアンプラグドな音楽ライブ、バーレスク、占いナイトなど開催。
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