LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.96

吉祥寺 STAR PINE'S CAFE

STAR PINE'S CAFEについて
吉祥寺の名門ライブハウス「曼荼羅」で知られる曼荼羅グループのライブハウスとして1997年9月にオープン。最大キャパはオールスタンディング350人(シーティング150席)。天井高6m、バルコニーのある地下2層吹き抜けのフロア、高さ可変式(40cm〜80cm)のステージと音響・照明設備、プロフェッショナルなスタッフによるエンジニアリングで、音楽はもちろん舞台芸術全般で、「空間」を生かした独創的なステージ演出が魅力。地層の奥に広がる小宇宙、アーティスト魂に火をつける。
STAR PINE'S CAFE お問い合わせ
STAR PINE'S CAFE公式サイト
武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1
TEL:0422-23-2251
ブッキング・イベント募集中(詳細

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 吉祥寺STAR PINE'S CAFE編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

制作・ブッキングマネージャー 伊藤健太郎氏

本日は、吉祥寺STAR PINE'S CAFE制作・ブッキングマネージャーの伊藤健太郎さんにお話をお伺いします。曼荼羅グループとして4番目のライブハウスですね。

はい、曼荼羅(1974年吉祥寺移転)、MANDA-LA2(1987年)、南青山MANDALA(1994年)を作り、ふたたび武蔵野にもどって1997年にオープンしました。今年で21年目となります。STAR PINE'S CAFEは、いわゆるライブハウス的な「暗くいて四角いハコ」のような方向ではなく、ちょっと洒落たレストランのような空間づくりが特徴です。

どのライブハウスも曼荼羅グループのハコとして多くのバンドマンに愛されていますね。

おかげさまで順調に規模を広げてきました。STAR PINE'S CAFEも、当時は武蔵野近辺では一番キャパの大きい店としてオープンしました。のちに「吉祥寺CLUB SEATA(2009年)」さんが、できたので一番ではなくなってしまいましたが(苦笑)。

出演者には実力のあるアーティストが集まっていますね。

はい、間口は全方位に広げていますが、出演者の多くはプロとして活動されているアーティストです。

伊藤さんはブッキングも担当されていますが、そのようなプロで活動するアーティストのブッキングはどのように行われているのですか?

彼らのスケジュールを聞いて、ライブツアーに組み込んでもらったり、作品リリースにあわせてレコ発ワンマンをやってもらったり、こちらで2マン、3マンのイベントを企画したり、いろいろトライしています。4バンドくらいの通常の対バンブッキングも組んでいますよ。

ジャンルや方向性はどのような感じですか?

基本的にジャンル的な制限は考えていません。STAR PINE'S CAFEのホールや照明設備、音響の特性も考えて、音楽だけにこだわらず、舞台全般に関わるすべての表現に対応しています。

天井がとても高いのには驚かされます。2階のバルコニー席も特徴的ですね。

天井高は客席で6メートル、舞台でも4メートルあって照明設備も充実していますので、バンドのみならず、ダンスやお芝居もしっかり演出できます。特徴のあるフロアーなので、場所によって(音の)特性は変わってきますが、音響も1階、2階それぞれにスピーカーを配置して、どこにいてもバランスよく聴けるようになっています。

この高さだと、生音もとても良いでしょうね。

出演者の方からも「中音(なかおと)がいいね」とよく言っていただけます。オペレーターのテクニックもあって、音響面でも、このキャパのライブハウスとしてはトップレベルだと自負しています。

ライブハウスは表現の出発点で、活動の原点になるところ

ライブを見に来られるお客さんの客層についても教えてください。

音楽に限らず、さまざまな表現形式のアーティストが出演していますので、下は高校生から、上は80歳代の人までご来店いただいています。メインとしては30代、40代くらいの女性のお客様が多いかなという印象です。

女性のお客さんが多いというのは出演アーティストによるところが大きいですか?

はい。もちろんそれも大きいですが、お店の雰囲気が来店しやすい環境を作っていると思います。 実際に、STAR PINE'S CAFEでライブをする時は、普段ライブハウスにあまり来ないようなお客様も来てくれるという声をいただきます。

ここ20年でライブハウスが増える一方、音楽業界は低迷状態ですが、影響はありませんか?

例えば、CDの売上枚数が落ちていったという話がありますが、大ヒットの枚数が100万から20万になったとしても、ここのキャパは150から300ですので、そのあたりの数字が直接影響するということはないように思います。

ライブハウスのキャパによってはプラス要素もあると?

たとえば、曼荼羅(キャパシティ約100人、椅子約60席)などの小さめの箱で集客力がついてきて、さらにステップアップしたいバンドをブッキングしたり、逆に、表現活動の成熟にともなってうちを選んでくれたり、若手にとってもキャリアのある方にとっても魅力あるキャパシティだと思います。

売上枚数だけでなく、ネット環境やバンドの減少といった変化もありますね。

若い世代で、楽器を弾く人が減ってきたとしても、楽器自体は表現方法の一つであって、それがパソコンのDTMでもいいですし、ダンスやお芝居、お笑いでもかまわない。彼らが、ネット配信で活動していたとしても、表現活動をする人がいなくなってしまったわけではないですよね。表現者がゼロにならない限り、表現する場所はネガティブに考えることはないと思います。

なるほど。しかし、演者そのものの減少や高齢化は、今後ライブハウス業界にとっても課題になりそうです。

ライブハウスは音楽や時代が変動する渦の中心にあって、表現の出発点であって、末端であって、音楽活動の原点になるところなのであまり悲観的になっていてもしょうがないですよね(笑)。僕自身、15年くらいこの仕事をしているので、メジャーフィールドで活躍している人から、これから伸びていくアマチュアミュージシャンまで、僕がおもしろいと思えるバンドやアーティストが存在する限りは、ブッキングする自信はありますよ。

ラストライブ精算の時に「うちで働けば?」と声をかけられた

それでは続いて、伊藤さんがライブハウス業界に入った経緯について教えてください。ご出身はどちらですか?

生まれも育ちも東京都の東久留米で、吉祥寺は昔から遊び場でした。

伊藤さんにとって音楽との出会いは?

ロックンロール、ロカビリーあたりが初期衝動だったと思います。ブライアン・セッツァーが大好きで、中学からギターをはじめました。

バンド活動もされていたのですか?

はい。やっていましたが、バンドはチューニングを1音半とか2音下げるようなラウド系でした(笑)。

STAR PINE'S CAFEに入るきっかけについて教えてください。

バンドのベーシストが違うバンドでメジャーに行くことになり、自分のバンド活動ラストイベントというのを、STAR PINE'S CAFEで企画しました。精算の時に、現ROCK JOINT GB店長の藤崎に「伊藤ちゃんこれからどうするの?うちで働けば?」と声をかけられたのがきっかけです。

伊藤さんのバンド活動はそこで卒業?未練はありませんでしたか?

「バンドで食っていくぞ!」というよりも、仲間と共に何かを創ることが楽しかったので、楽器は解散を期に押入れにしまいました(笑)。当時から漠然とですが、ブッキングを仕事にして様々な空間を創りたいと考えていました。

ベストなタイミングで伊藤さんにお声がかかったのも、必然の流れだったかもしれませんね。

1999年ころからSTAR PINE'S CAFEでイベントを企画していて、藤崎にはよく相談をしたり、お世話になっていました。当時、八王子から新宿まで、中央線沿線のあらゆるライブハウスでライブをしていましたし、渋谷サイクロン新宿アンチノック、高円寺ギア、高円寺20000ボルト、八王子ハバナなどにも出演していたので、そのあたりで活動しているバンドとのコネクションを期待されていたのかもしれません。

曼荼羅グループへ新しい風を呼び込み、現在にいたるわけですね。最後になりますが、STAR PINE'S CAFEからのメッセージをおねがいします。

風を呼び込んだかはわかりませんが(笑)。STAR PINE'S CAFEはライブハウスでありながら、おつまみからご飯物まで、厨房でしっかり調理したメニューをお出ししています。充実した料理メニューとともに、バーカウンター、ホール、音響・照明など、すべてのポジションにプロのスタッフを配置しており、アーティストのステージを堪能していただける空間を提供しています。好きなアーティストを観ながらSTAR PINE'S CAFEのサービスも楽しんでいただければ幸いです。

ありがとうございました。当サイトの主な読者であるアマチュアバンドマンに向けてのメッセージもいただけますか?

最近はSNSの交流などでお客さんとの距離感が近くなり、お客さんなのか友達なのか関係性が曖昧になっているなぁと感じる時があります。STAR PINE'S CAFEは客席との距離は近いですが、しっかりと舞台を創り表現する事ができます。対バンイベントも組んでいますので、自らの表現を追求していきたいアーティストはぜひお問い合わせください。

本日は貴重なお話ありがとうございました。今後もSTAR PINE'S CAFE、そして曼荼羅グループのアイデアと推進力に注目していきたいと思います。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2018年11月)

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吉祥寺(武蔵野市)
吉祥寺駅
新宿からJR中央本線、渋谷から京王井の頭線が乗りいれる。高円寺、国分寺とあわせて「中央線三寺」と呼ばれるが、吉祥寺に同名の寺はなく、明暦の大火により、駿河台にあった吉祥寺門前の町人たちが家を失い、神田川の源流である「井の頭池」の北へ移住。開拓地に「吉祥寺村」と名付けたことが地名の由来とされる。
MANDALA GROUP
1971年に初代曼荼羅をオープン。1974年に吉祥寺に移転して以来、吉祥寺を中心にライブハウス(吉祥寺曼荼羅MANDA-LA2南青山MANDALASTAR PINE'S CAFEROCK JOINT GB)、スタジオ(studio LEDA・studio α vega)を運営。YouTube公開生放送musica da Leda、レーベルや出版など音楽関連事業を展開。
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