ライブやろうぜ! ステージファイル Vol.10

SHIBUYA LUSH

渋谷LUSH
SHIBUYA LUSHについて
2005年、下北沢BASEMETBARの系列店として誕生。幅広いジャンル・年齢層の方に支持され現在に至る。ジャズ系やインスト系のバンドも数多く出る特徴を持つが、相応にして屈強なミュージシャンが出演することからプロの腕試し的一面を併せ持つライブハウスでもある。
SHIBUYA LUSHへのお問い合わせ
LUSH SHIBUYA miyamasuzaka公式サイト
渋谷区渋谷1-10-7 グローリア宮益坂lll B1F
TEL:03-5467-3071
渋谷ライブハウス・ラッシュ

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜渋谷LUSH編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

LUSH店長 田中勝

SHIBUYA LUSH店長 田中勝 氏 BLOG

今回は大学以来の同級生でもある田中勝さんにお話を伺いましょう。

よろしくお願いします。

そもそも何故ライブハウスで働こうと思ったの?

自分からはライブハウスで働こうなんて思ってはなかったよ。LUSH立ち上げのときに、ブッキング担当として誘われて、店長が辞めてったからそのまま押し上げられる形で店長になっただけ。元々ここ入る前は港の倉庫でバイトしてたし、その頃よくここの系列店のBASEMENTBARにバンドで出演してたから声がかかっただけ。ブッキングはどこも少ないからね。

バンドとして演奏していた立場から演奏者を支える立場なったとなると、ライブに対する見方も随分変わったんじゃない?

ブッキング自体はそこまで大変じゃなかったけど、経営と企画内容がうまくリンクしなかったりする部分は大変だね。推しイベントなのに集客が無かったり、逆に狙ってなかったイベントの方が沢山来てくれたりとかもある。けど、その他にバンドマンのケアーだよ。人と人とのケアーってのも仕事の一つ。

店長にもなって結構な歳月を様々なバンドを見てきたと思うんだけど、最近のライブハウスシーンはどんな様子?

パンジーを咲かせにいく奴が多いかな。

パンジー(笑)?

ホントならミュージシャンって、シーンを作っていくために根を張り木を育てていかなきゃいけないと思うんだよ。10年かけて苗木を育てて枝葉を付けていくようにさ。そういう状態になれば、やってることが枝葉のように分かれていっても、バンドに軸があるからそのとき何をやりたいかってのが見えるし誰も突飛に思ったりしない。

時間をかけて軸を作るかどうかってとこだね。

今は一瞬で花を咲かせようとする傾向が多いから一瞬で咲いても一瞬で枯れちゃう。パンジーみたいにサイクルが早い。たぶん、やってる人間もそれで良いと思ってるし、何十年もやろうと思ってないと思う。一回でも(ちょっとでも)売れればいいやって発想だろうね。

俺とかは好きで音楽やってるだけだったし、初めから音楽で食おうとか売れようとかは思ってなかった。当時は、そういった動き方してる連中の中で、音楽に対してもっと熱い人間がピックアップされたりしてた。ピックアップするレーベルの人も、ひたすら好きなジャンルのみ詳しくて、拾って推して育てていくって感じだったと思う。今は逆に、バンドもレーベルも芯のある熱を感じない人が多いね。

のっけから結構なこと言っっちゃてるけど大丈夫(笑)? でも、その現状は人生の選択の早さという点においては利点もあったりしないかな?

そこは時代全体の流れだからしょうがないってとこはあるよ。聴く側によるところもあるし。時代的に聴く側にもゆとりがないってのかな? 圧倒的な歌唱力とか奇抜なものになら飛びつきやすいんだけど、ジワジワくる良さとか、味わったら気持ちいい音楽とかには飛びつかなくなった。面白いけど広まるのに時間がかかる音楽ってのが待てない。育てる側も、今その時が最高のモノに仕上がってないと、金がないから育てられないって状況に陥ってる。景気の問題も影響して色んなことが短絡的になってると思うよ。

そもそも、ジャズとかクラシックなんて曲調が上昇するのに10分かかったりするもんね。そんなの待てない人がほとんどになったでしょ(笑)!? そっからが面白いのに!

待てないのはもったいないよね。ただ、単発のヒットを狙いに行くスタイルが主流になったということは、中には“育てる音楽”を聴いたことがない若いリスナーもいるわけじゃない? そういった年輩ミュージシャンの作る音楽が、若いリスナーには新鮮に感じることもありそうだけど?

それはあるね。まあ、現実的にはベテラン世代自体は売り方変えないと難しい部分はあるけど、若いミュージシャンが“育てる音楽”をやってたりすると新鮮にみえるらしく、若いお客さんに受けてるってのはある。そういった子たちが売れて、ベテラン世代と一緒に絡むと面白くなってくのかなって思う。上の世代は幹はしっかりしてるけど腰は重いから、若い子が引っ張ってくれると良い。おっさんは良くも悪くも変わらんから(笑)。

音楽の楽しみ方も、瞬間瞬間で単発的に楽しむものに変化してきたと思う。

どっちみちベテランには少し厳しい現状だね。

瞬間的には受けるかもしれないけど、固定ファンが付くってのは難しいよ。さっきも言ったように、今はお客さんの楽しみ方が流動的だからね。ネットの普及で、その時々の感覚が多々出てくるから一個人も固まりにくい。ずっと同じことを好きでいるってのは難しい。結婚問題と一緒でしょ。最近はすぐ離婚するでしょ(笑)。

確かに離婚はまわりにも多い。

それと同じだよ(笑)。幸せの捉え方が変化した。昔は“ずっと一緒にいることが幸せなんだ”って考えが当たり前だったけど、今は“幸せは、その瞬間瞬間の断片的なもの”ってとこにも気付きだした。 結婚式もその瞬間を楽しむイベントみたいになったじゃない? 子供が生まれた瞬間の喜びもそうだし、刹那的に感動するものになってる。音楽の楽しみ方も、瞬間瞬間で単発的に楽しむものに変化してきたと思う。

となると、今の時点でキャッチーとは言いにくい音楽をやってる人は自信を無くしてる人も多いんじゃない?

そうだね。ホントにかっこいいと思う音楽でも、売れてなかったり全然お客さんが入ってなかったり、そういうギャップというかアンバランスな現状が出てきてるよ。

良い演奏や良い曲だけではお客さんが付きにくいってこと?

そうそう。達者なMCとか激しい動きとか、音以外のエンターテインメント要素があった方がお客さんが付きやすい。でも俺としては、動こうとするより“自然に動いちゃった”ってなってほしい。ボーカルなんかも、意識的に前に前に出ようとしすぎるより“湧き上がって出てきちゃった”ってのが良いんだよ。黒人のゴスペルとかジェームス・ブラウンの音楽とかによく出てくる『Hit me』ってセリフなんてまさにそうじゃない!? 言わなくていいのに、昂ぶって思わず出ちゃったってやつ(笑)。

ジェームス・ブラウンは最終的に雄叫びのみの楽曲とかもあるよね(笑)。

それがまた完璧なタイミングだから一発で落とし込めちゃう。合いの手だけでかっこいい。現状のライブシーンだと、その落としどころわかないまま、ちょっとのインスパイアで挑戦して、お互いによくわからないまま進んでグチャグチャになったりしてる現場も少なくはない。聴く側も『これ面白いのかな?』って悩んじゃう。要するに面白いリーダーシップがいない!

今までは時代の波で(社会全体として)面白がってたものが、現在は個人で判断する状況になった。でも自分たちの“良い”って判断に自信をもってないから、よっぽどメディアとかが持ち上げない限り、自分個人で面白いかどうかの判断が出来なくなってる。

どこか後ろ盾のある音楽やコミュニティーが出来上がってれば“これは良い音楽だ”と感じれるみたいだけど、一人では判断するのが出来なくなってきてると思う。

楽しむことに消極的になったと?

いや、ネットも発達してるし、バンドや音楽を探すことには積極的だと思う。確かに面白いバンドも沢山あるし興味深いバンドは出てきてるんだけど、何か色んなとこでアンバランスな状況が出てきてる。CDが売れてるのにライブに人が来ないとか、その逆もそうだし、トータルで一致しなくなってきてる。どっか一部分だけが流行ってたりする。メディアで取り上げりゃ一瞬だけ盛り上がったりするけど、ずっと変わらずお客さんが付くってのは少なくなってきてる。

ネットの影響が大きいと?

ちょっと前だとパソコンなんてなかったから、自分で雑誌みたりフリーペーパー調べたりってのが楽しみであったりしたよね。今はライブもネットで観れちゃうし。

確かにライブ映像も多くの人が簡単にアップできるようになったよね。

あれもさ、意外に売上げを下げてる要因になってると思うんだよね。人が何か見たいって心理が働く時って、匿名性とか秘めたものの方が気になると思うんだ。雑誌の袋とじもそうだし、当時で言うなら滅多にライブしない大黒摩季とかZARDみたいに、隠された方が見たくなったりする。どこでも観れるようになっちゃうと『あ、これ知ってる』ってなって観なくなっちゃたりする。

余計なこと考えずに好きでやり続ける事!

そう見るとネットの普及が影響する一側面も含め、ライブハウスシーンの現状は音楽的な成功を目指すミュージシャンにとっては厳しいという判断?

成功の設定にもよるよね。俺らでいうビッグなミュージシャンって発想は、ずっと一線でやってる人だったりするけど、それと反して一瞬でも売れたらその人にとっては成功だっていう人もいる。でも、どうやったら成功するかって事を考えたりするより、そんなことすら考えずに真っ直ぐにやってる人が、自ずと目指すところに行ってると思うよ。

ヒット曲を出すのに具体的な方法論が無いのと同じで、ビッグになる人も“ただ好きでやってた”ってだけで売れていくんだと思う。余計なこと考えずに好きでやり続ける事!

締めにふさわしい素敵な言葉をありがとうございました(笑)。

インタビュー&ライター 浅井陽 BLOG / Twitter(取材日 2013年10月)

インタビュー特集一覧(バックナンバー)

音楽の仕事探すならミュージックジョブネット
ライブハウスの求人【募集中】
ミュージックジョブネット
サウンドペディア
BASEMENTBAR
渋谷ベースメントバー
下北沢のライブハウス。系列店に下北沢THREE / 渋谷LUSH / 渋谷HOMEがある。下北沢2店舗と渋谷2店舗は、それぞれ店が隣り合わせとなっている。
パンジー
スミレの仲間の園芸・観賞用植物。1年目に青葉を茂らせて冬を越し、2年目に花実をつけた後に枯死するライフサイクルの短い一年草。開花期は10月〜5月。
結婚問題
現代においては離婚率や離婚後のトラブルも多く社会的な問題となっている。客観的に見ると制度そのもが時代にそぐわない状態に陥っているといっても過言ではない。美輪明宏曰く、「結婚は「努力・忍耐・あきらめ」の連続、ウエディングドレスの白は死に装束」とも。
ジェームス・ブラウン
レジェンドとしても名高いソウルシンガー。 ファンクの帝王と呼ばれ、シャウトを用いたヴォーカルと、斬新なファンク・サウンドが特徴である。あのマイケル・ジャクソンにも多大な影響を与えた人物。
大黒摩季
北海道出身のシンガーソングライター。ビーイング系アーティストのコーラスを担当などし下積みを経たあとブレイク。33枚のシングル、13枚のアルバム、5枚のベストアルバムを発表。
ZARD
酒井泉水を中心としたユニット。アルバムが9作連続でミリオンを達成。90年代を代表するJ-POPユニットの一つ。45枚のシングル、11枚のアルバム、4枚のベストアルバムを発表。