LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.7

新宿ANTINKOCK

新宿アンチノック
新宿アンチノックの歴史
2013年10月で28周年を迎える。80年代初頭からアンダーグラウンド界の大御所達による過激で熱いステージが繰り広げられ、約10年前の改装を経て今もなおハードコア・パンクの聖地として絶大なるステータスをもつ日本を代表する東京新宿のライブハウスの一つ。
新宿アンチノックの音楽
パンクからの流れを汲んだハードコアはもちろん、週末にはザクザクしたリフとメタリックなサウンドのヘビーメタルやデスメタルなどのサウンドを取り入れた若い世代のハードコアバンド等の熱い演奏が楽しめる。とにかくハードな音好きには見逃せない。
新宿アンチノックに出演しよう!
デモ音源やライブのYouTubeを貼ってメールを送ってみよう。ただ、ブッキングマネージャーいわく「バンドやアーティストのオーラを直接見てみたい。結局アウトプットはアナログ(生演奏)。やりたいことを生身でぶつけてきて欲しい」という思いから直接来店してアピールするのもOKだそうだ。
新宿アンチノックへのお問い合わせ
Antiknock 公式サイト
新宿区新宿4-3-15 レイフラットビルB1F
TEL:03-3350-5670
ライブハウス新宿アンチノック

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜ANTIKNOCK編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

新宿アンチノック ブッキングスタッフ 印藤勢(インドウ・セイ)氏
@twitter / HP

はじめまして、本日はよろしくおねがいします。まずは印藤さんのこれまでの活動やアンチノックでのお仕事について教えて頂けますか?

よろしくおねがいします。僕自身、ずっとバンドをやっていて、今は「SEI WITH MASTER OF RAM」という自分のバンドで活動しています。その前は「マシリト」というバンドで、これは解散してしまったのですが、日本のフォークとヨーロピアンなヘビーメタルの融合というテーマでは同じで、まあ、音的にはまったく違うとも言われるのですが、さらに追究するために集まってくれた仲間ともっと突き進めたいと思っています。

それで以前、アンチノックにバンドとして出演しているうちに「うちで働かないか?」って声をかけてもらったのがきっかけで、ブッキングマネージャーとして、企画・制作・営業を担当するようになって、今年で12年ですね。

あの羊のポスターのバンドですね?素敵です!

羊大好きなんですよ、僕。食べるのが。ジンギスカンとか大好きで。僕、羊だったら一生食ってるんで、そのくらい羊が好きです(笑)バンド名に「ラム」ってついてるでしょ、ジンギスカン屋によく行くんで、ラムってつけようと(笑)

アンチノックを象徴する「GAUZE」使命感に溢れ、絶対にブレないバンドマンの憧れでもあり、生きる伝説。

それでは、アンチノックの歴史やプロフィールを教えて下さい。

80年代、まだ自分がリスナーでありファンだった時代から、アンダーグラウンドの大御所バンドがたくさん出演していて、ハードコア・パンクの聖地というブランド・ステータスをもつライブハウスです。

ハードコア・パンクのみならず全世界のロック史上に於いても名盤と呼ぶにふさわしい1986年発表のGAUZEの2ndアルバム「EQUALIZING DISTORT」。時代を超えて今でもクソッタレの世の中で自分の歌を歌い続ける勇気を与えてくれる。怒りを 涙を溜めて 生きろ @編集部

そして、最もアンチノックを象徴するのが「GAUZE」というバンドです。アンチノックを語るにはGAUZEを避けて通ることは出来ません。80年代から日本のハードコアの原点みたいな人たちで、アンダーグラウンドでやり続けることを宿命としているというか、すごく使命感に溢れていて、絶対にブレない、バンドマンの憧れでもあり、生きる伝説です。

そのGAUZEさんの看板イベントで「消毒ギグ」というのがあって、これはハードコア・パンクに関わる人間なら知らない人はいないライブイベントで、スピード感とパッション、そこに残酷なまでのピュアな姿勢を貫いているバンドが出演してくれています。

すごいです。そこまでストイックな姿勢のバンドはみたことがありません・・・・

この消毒ギグは必ずアンチノックでやってくれていて、アンチノックを盛り上げてくれているという意味では、共存しているというか、時代が変わっても共闘してきた同士といえると思います。

もちろんアンチノックではハードコアだけじゃなく、最近ではボーカルもの、メロコア・ガレージロックンロール・ブリットポップ等のサウンドに影響をうけたシーンもありますし、若手バンドのサポートや育成にもすごく力を入れていますよ。

最近のバンドでおすすめはありますか?

アンチノックでは「CURTAINS label 」というレーベルをやっているのですが、そのレーベルのイベントにも出演している「カイモクジショウ」というバンドですね。憑依したような完全にいっちゃってて入り込んでる感じなんだけど、歌の技術力でも表現力でも飛び抜けていて、独自の世界観を放っている奇才の女性ボーカルとベースレスという珍しいスリーピースバンドです。これが、すごくいいですよ。音も重っ苦しくムードも憂鬱な感じなんですけど、パンチ力、フックもしっかりあるバンドで、精神的にヘビーな感じですね。メンタルにきます。カイモクジショウだけに許された美しさみたいのがありますね。ぜひ聞いてもらいたいです。

レーベル運営などを通じて、バンドの音楽活動を積極的にサポートされているとのことですが、 最近、ライブハウスや音楽業界の不況という話を聞きますが、そのへんはどうでしょうか?

スケジュールをみていただければ分かると思いますが、おかげさまで、アンチノックは盛り上がっているんですよ。

よく音楽的に不景気のように言われてますけどね、どの時期と比較しているのかというと大体バブル期なんですよ。みんな良い時期を基準として今は盛り上がってないと言いますが、じゃあ、盛り上がっていた時が仮に正しいとして、当時のアーティストや業界のシステムが果たして今の時代に通用するかどうか?そこのジレンマをいくら議論しても、多分ね、停滞なんですよね。 それにそんな話は、バンドを始めたばかりの10代の子たちにすれば、タダの昔話なんですよね。

売上枚数とか動員の話も当然大事なのは分かるんですよ、僕もビジネスに携わっているんで。分かるんですが、それよりも「ライブハウスという存在と自分(バンド活動をしている人)の人生をどうリンクさせていくか」ここが僕は一番注目しているところですし、そこにすごく可能性を見出していますね。

ロックやりたい、バンドやりたいという若者も減ってきているように思うんですが。

さっき言ってたミュージックバブルというんですかね、その頃は、BOOWYやブルーハーツといった「ロックスター」たちに憧れて楽器屋に駆け込む、そういうバンドを始める初期衝動のようなものがあったんですよ。でも今はチャートを見てもバンドが少ないですし、誰もが知っているようなロックスターがいない。

そういうコマーシャルな到達点もないので、どうしてもエレキギターをやるとかロックバンドをやることが、学校でも家庭でも仲間同士でも、すごいマイノリティというか少数派のことで、尚且つ、不景気で夢がみれないというような刷り込みがあったら・・・まぁ〜目指さないでしょうね。

バンドを始めても、ちょっと駄目だとすぐやめちゃう。正直、志が低いと感じることもあるのですが・・・

20代も半ばになって、この先バンドを続けていこうか?それともやめて実家を継ごうか?とか、いろいろ悩みがあると思うんですよ。でも、もし今悩んでいるとしたら自分の番が来ただけで、まだ来てない人にもいつかは必ずその順番がくる。それについてはやり過ごすしかないんですよ。

ただ、釣りが好きとか、スノボが好きとか、ジョギングが好きとかあっても「オレそろそろ歳だから釣りやめるわ〜」って奴いないじゃないですか?でも、ことさらバンドってそういうのありますよね。そこが不思議なところなんですよ。

ライブハウスとは「自分の好きなことに人生を費やし、それを自由に表現していい場所」

そうですね。結婚して子どもできたから、もうジョギングできないっていうことはないですよね。

経験からいって、バンドをやめる人はやめちゃうんですよ。それは仕方ないと思うんです。だけど、せっかく始めたんだから、もう少し生業というか、ライフワークとして、あなたの人生とバンド活動をどうリンクさせていくか、ということを追求してみてもいいと思うんですよ。

ライブハウスにしても、これまでの、かくあるべし、こうあるべき、ではなくて「自分の好きなことに人生を費やし、それを自由に表現していい場所だよ」と。生涯の生業として続けてくれるミュージシャンやバンドマンが増えたらいいなと思います。

でも、大きい所を目指す気持ちもどこかで持っていてほしいなというのもありますよね?

もちろんトップミュージシャンになるんだ、武道館にいつか立ってやるんだって、僕はそういうのも大好きですよ。全然それを否定しているわけじゃなくて、むしろ応援したい、そういう人を。

ただ、何というかプリミティブというか原始的というか、原点に回帰した方がいいんじゃないかな。一発当てようとか一攫千金のイメージだけじゃなくてね。そういうことも必要なんだと思います。

これまでのあり方に囚われず、そして流されずに自分貫く姿勢が伝わってきました。これからもアンチノック、頑張っていただきたいです。

マラソンですよ。結局は時代に負けないことがキーワードなんで。もともと異空間・異次元じゃないですか、ライブハウスって。アンチノックに来たらアンチノックの時間が流れてて、そこにタイムスリップしてきてもらえれば、一番いいですね。だから死守するしかないですよね。死守がゴールのマラソンです。つまりゴールはないんですけどね。

そういうの聞くとバンドやっている子たちにとっては心強いと思います。本日はありがとうございました。

まとめて面倒みるよ!ありがとうございました。

インタビュー Limo Hatano / MUSIC-MDATA編集部(取材日 2013年9月)

インタビュー特集一覧(バックナンバー)

バンドメンバー募集のメンボネット ミュージックジョブネット
サウンドペディア
SEI WITH MASTER OF RAM
GAUZE
SEI INDO率いるロックバンド。ハードなギターサウンドとパワフルなドラムにフォーク・歌謡ロックのテイスト哀愁あるボーカル・メロディーが絡むサウンドが特徴。2013年4月ファーストアルバム「a sheep」をリリース。 → 公式サイト
ジンギスカン
マトンやラム等の羊肉による焼肉料理の総称。ジンギスカン鍋という専用の鍋に野菜とともに焼いて食す。いわゆる焼き肉の羊肉版といえる。北海道の郷土料理としてしられる。
ハードコア・パンク
強いメッセージ、たとえば権力や金をもったものが弱者に対して横暴な振る舞いをしたり、またそれらを得るために本来持つべき姿勢を失っている人や社会に対しての批判を歌う音楽のジャンル。また、そういったものになびいていながらハードコアの名を語る者に対しては、もっとも厳しい態度を見せる。ロックを過激にしたサウンドが特徴であるが、あくまで強い言葉やメッセージの激情が抑揚をもった結果として「音」になっているのであって、それらについて他者が語ることには意味が無い。
GAUZE
GAUZE
1981年に結成された日本ハードコアパンクの重鎮。これまでに5枚のオリジナルアルバムと1枚のシングルを公式に発表している。ハードコアバンドのみならず多くのロックバンドに影響をあたえている。※詳しは本文インタビューを参照。→ 公式サイト
消毒ギグ
消毒GIG
ハードコアバンドの「GAUZE」が主催するライブイベント。1980年代よりLip Creamなどの大御所バンドから、SxOxB、OUTOといった世界的な活動をしていた若手(当時)のハードコアバンドが出演していた。東京での開催はほとんどが新宿アンチノックである意味ホームグラウンドである。
メロコア
音楽のジャンルのひとつでメロディック・ハードコアの略。上記の「ハードコア・パンク」の項目での説明の通り「ハードコア・パンク」そのものをジャンルとしてとらえることは意味がないため、正確には、メロディックなメロディーやポップなギターリフを「ハードコア風」のサウンドでアレンジしたジャンルという意味になる。
CURTAINS label
CURTAINS label
新宿アンチノックが主催するインディーレコードレーベル。主なアーティストはカイモクジショウ・一寸笑劇・NoLA・Aug. RAINSNOW・Nostalgia Sevenなど。