LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.60

LIVE THEATER ORPHEUS

小岩オルフェウス
小岩オルフェウス について
2009年、江戸川区小岩の蔵前橋通りにオルフェウスビルとともに誕生して以来、地域にしっかり根を張り、地元の中高生からプロミュージシャンまで、好きなことを本気でやれるライブハウスを志してきた。パンク心のある小岩で「一本筋の通った箱でありたい」と語るオルフェウス店長・根岸 和貴氏はプロのベーシストでもあり、『音楽には人の精神に訴える力がある』と信念をもってこの道に飛び込んだ叩き上げの音楽人だ。東京最東端の街から、熱き魂を解き放つ。
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小岩オルフェウス

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 小岩オルフェウス編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

小岩LIVE THEATER ORPHEUS店長 根岸和貴氏

本日は小岩LIVE THEATER ORPHEUS(オルフェウス)店長の根岸和貴さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか?

2009年8月です。当社グループのSOUND STUDIO Mが、蔵前橋通りを上がったところにある前のビル(エムズビルディング)から、この場所に移転して新しいビル(オルフェウスビル)を建てることになり、そのタイミングでオープンしました。

エムズビルディングは以前「Live Spot eMSEVEN(エムセブン)」というハコがあったところですよね?

はい、ありましたね。eMSEVENは新しいビルには移転せずに、元スタッフの方たちは小岩BUSHBASHというライブハウスをオープンされました。なので、現在、うちとは関係はありません。

ということは、オルフェウスは比較的新しいハコですね。

そうなります。歴史あるSOUND STUDIO Mが運営するハコですが、ライブハウスとしては、いわゆる新参者の立場でもあります。

根岸さんがオルフェウスに入られたのはいつ頃ですか?

入社したのは、2011年3月3日です。10年ぐらい前にSOUND STUDIO M西葛西店の店長をやっていたのですが一旦辞めて、再度復帰するタイミングでここの店長となりました。

参考にしているのは「地方都市のライブハウス」

オルフェウスは本インタビュー企画で都内最東端のお店になります。小岩ならでは、という特徴や目指している方針があったら教えてください。

メインストリームといわれるエリアからは遠いので、ここ(小岩)まで来るのは決意を固めないと来られない。渋谷みたいに「気軽に観に行こう」という感覚にはならないなと思いました。それで、自分がベーシストでいろんなところを回った経験を活かして参考にしたのは「地方都市のライブハウス」ですね。

地方都市のライブハウス、具体的にお聞かせください。

参考にした一つが、九州のライブハウスです。東京のライブハウスといえば、スケジュールの多くがバンドのブッキングライブじゃないですか? でも、九州のライブハウスではバラエティに飛んだ様々なイベントを開催していました。それを参考にオルフェウスでは、例えば高校1年生の楽器を始めたての子たちがライブをやり、その翌日はドラマーのラルフ・ロールさんがセミナーをやったり、ベースのIKUOさんがセミナーをしてくれたり。「何があるかはわからないけれど、あそこに行けば絶対楽しい」という場所を目指しています。

なるほど、ライブハウスとして本来あるべき姿かもしれませんね。

ですので、ジャンルやパフォーマンスの仕方で垣根を設けず、学生さんからプロミュージシャン、地域の方々にとっても楽しい場所を志しています。おかげでいろいろな方に出演していただいています。

このあたり(小岩)の土地柄として、バンドの特徴などはどうですか?

ここ小岩は、「反骨精神」がある若者が多いなあ、と感じました。なので、うちとしても「1本筋の通った箱」にしたいと思っています。

気合の入ったライブハウス、と。

まさしく(笑)。ただ、ジャンルや根性みたいな精神論じゃなくて、あくまで「演者さんのコンセプトを、お客さん、スタッフ、一緒になって表現する」ことに全力で取り組んで、出演者に応えたいというスタンスです。

出演バンドに根岸さんからアドバイスやレクチャーすることもあるのですか?

干渉しないわけではないですが、まずは全てを受け入れるようにしています。僕個人的なことを言えば、魂があって、歌詞の内容がえぐくて、例えば政治的なことを歌って…というのが好きですが、そこは僕個人のことであって、アーティストに強要することではありません。あくまで、1人1人、出演者自身が持っている信念を表現できる箱にしたいです。

あくまで主役は出演者であるということですね。

僕らが若い頃は、ライブハウスに出たりすると「そんなんじゃ駄目だろう」とダメだしされていましたけどね(笑)。でも、今は時代がそうではないかな、と思います。

ジャズの生音からハードコアの爆音まで、ベテランPAが担当

サウンド面のこだわりや特徴は?

PAはベテランのエンジニアが担当しているので、初めて来ていただいた方から、プロの出演者まで、皆様に評価を頂いています。ジャズ系のイベントは生音を活かして、ハードコアのイベントでしたら、それこそすさまじい爆音です。どんな音でも最高の音を提供している自負があります。

天井の高さやステージの広さなど、中音(ステージ上のサウンド)もつくりやすそうな造りですね。

中音にも自信がありますね。うちのスタッフはみんな音楽が好きで、知識も幅広いので、あらゆるジャンルに対応できます。純粋に音楽を楽しめるライブハウスだと思います。

続いて根岸さんの音楽遍歴を教えてください。

実を言うとクラシック上がりなんです。小学校の時からピアノを習っていて、発表会に出たりしていました。見た目と全然違いますよね(笑)。

はい、ゴリゴリのロッカーだと思っていました。エリート育ちなのですね!

いえいえ、そんなことは…(笑)。その後、高校に入って「とあるバンド」に出会ってしまってからバンド一筋、音楽一筋になりましたね。

とあるバンド、というと?

はい。まあ、自分のバンドなんですけどね(笑)。大学進学を前に、音楽の道という新たな選択肢ができてしまって、当時住んでいた埼玉から群馬まで、延々と高崎線に揺られながら、バンドメンバーと人生について語り合ったことがありました。

というと、音楽以外の進路もあったのですか?

当時は母が重度な精神的な病気を患っていたのもあって医療の勉強もしていました。医療として病気を治すことを考えていましたが、音楽にも精神的な部分に直接訴える力があると確信したこともあって、最終的に音楽を選びました。

新聞奨学生で音楽専門学校に。気合だけはあった(笑)

なるほど…。ご家族のこともあって難しい選択だったのですね。

そうですね。音楽を選ぶことで、医療の道がゼロになりますが、それまでやってきたものを全て捨てて、音楽の道に飛び込みました。誰にも迷惑をかけずに音楽をやるよう決めていたので、新聞奨学生で学費を稼ぎながら、音楽専門学校に通いました。気合い、根性だけは入っていましたね(笑)。

その若さで自立して音楽に打ち込むとは相当な根性だと思います。

ありがとうございます。自分はそういう環境だったからこうなってしまっただけで、希望としては、そんな苦しい状況は少ない方がいいですよ。もちろん、中には僕みたいな境遇で頑張っている子もいるとは思いますけど。

そんな苦労の甲斐あってプロミュージシャンとしての活動がはじまるのですね。

はい。初めての仕事は、じまんぐ(シンガーソングライター・プロデューサー / Sound Horizonサポートボーカル等)さんのソロプロジェクト「じまんぐvs.ジャージャージャージー」でベースを弾いていました。現在もサポートを中心にプロのベーシストとして活動しています。レコーディングも独学で学んだので今はエンジニアもやっています。

オルフェウスから発信するミュージシャンを育てたい

今後のオルフェウスが力を入れていきたいことはありますか?

オルフェウスが発信するミュージシャンを育てていきたいですね。ここ数年、新人ボーカリストのディレクションとプロデュースをやっています。現段階で2人手がけていて、近々発表できるように頑張っています。今まで、オルフェウスに出演して頂いたアーティストの中で、僕が声を掛けたアーティストは2人いるのですが、その2人はリハーサルから迫力が半端なくって、一瞬で心を掴まれました。1人は既にデビューしていて、もう1人は、パブリックイメージリミテッドみたいな楽曲をやる高校生で、「天才が来た!」と驚かされました。どちらも天才だと確信しています。

それは楽しみです! それにしても、店長職とのかけもちは相当ハードですね。

ライブハウス、ミュージシャン、レコーディングエンジニア、プロデュース、ディレクション、作曲・編曲もやりますが、始めから終わりまですべて自分でできた方が、最終目標地点まで到達するのにスムーズだし、結局は楽なんですよ。

基本的に全部自分でやってしまうのですね。

以前は色々な方に協力頂いたりしていたのですが、今のこの時代、これはアーティストにも言っていることでもありますが、全て自分たちでできた方が賢明だと思います。そういった部分を考慮してマネージメントもやっています。以前、この会社を一旦辞めていた頃にマネージメントの会社を立ち上げまして、その経験も活かしています。

バイタリティあふれる根岸さんの活動もオルフェウスの魅力です。それでは最後にメッセージをお願いします。

好きなことを本気でやれるライブハウスです!

シンプルかつ最適な言葉を頂きました! 本日は貴重なお話をありがとうございました。

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インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2017年4月)

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小岩駅(江戸川区)
小岩駅
江戸川をはさんで千葉県(市川市)に隣接する東京23区最東端のまち。マツコ・デラックス曰く「小岩とか新小岩を掘り下げはじめたら、とんでもないことが起きるわよ。」と小岩のカオスな魅力を熱弁。花壇の花が目に鮮やかなフラワーロード、サンロードや昭和通り、地蔵通り、南北に商店街群が密集し、時代と国籍が入り交じる場末の歓楽街に追憶のメロディーが染みる。
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