イベント会場の魅力探索ガイド Vol.20

東京文化会館

上野の杜に花開く、音楽の殿堂

半世紀をこえて輝きつづける「音楽の殿堂」東京文化会館は、都内における本格的な音楽ホールの先駆けとして1961年春オープン。海外の名だたる歌劇団が来日する首都圏随一のオペラ・バレエ劇場としても名高く、数々の歴史的名演の舞台となってきた東京都立のコンサートホール・劇場である。

上野駅公園口の正面に建つ堂々たる建物は、近代建築の巨匠・前川國男が設計した日本を代表するモダニズム建築。クラシック音楽・オペラ・バレエの公演を主体とした5層2,303席の大ホール、「奇跡の音響」の代名詞をもち、室内楽やリサイタルを主体とした649席の小ホールを有し、舞台芸術の最高峰を提供。

※1999年5月、2014年12月大規模改修リニューアル。

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造形芸術とミューズが共演する六角形の祝祭空間

東京文化会館の大ホールは、音響に優れた特別な六角形デザイン。大ホール舞台の中心線は国立西洋美術館の中心に合わせて設計されている。コンサート用とオペラ・バレエ用で舞台が入れ替わる、世界でもめずらしい二重構造ステージで、オーケストラなどの演奏会では、反射板一体型迫り装置が奈落からせり上がり、コンサート用の舞台となる。

舞台間口18m、奥行き24m、高さ11m。オーケストラピットは舞台昇降式のため、演目に合わせて客席数を変える(客席を撤去する)必要がなく、オペラでもコンサートでも2,303席の客席数を確保。

側壁を飾るユニークな雲形の拡散体は、彫刻家・向井良吉の作。月と太陽がひとつになって、音を響かせる。

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お花畑をイメージした大ホール客席シート

全2,303席(1階1,282席、2階238席、3階355席、4階268席、5階60席)の大空間を彩るカラフルなシートは、スカーレット、イエロー、イエログリーン、ダークブルーの4色の椅子張地で、お花畑をイメージ。意匠性に加え、空席が目立ちにくい効果がある。

華やかな残響をもつコンサートホールが各地にできた今日においても、バロックから現代音楽まで、オーケストラもオペラも楽しむことができる独特の響き、芸術性の高い劇場空間は、多くのアーティストとファンを魅了。東京文化会館では、オーケストラの音が良いおすすめ席は5階席と言われている。

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フライタワーと奈落、高度に進化する舞台機構

大がかりな装置を駆使するオペラ・バレエ上演に対応するため、1998〜1999年の大規模改修では、床機構・吊物機構を大きくリニューアル。奈落の下を8m掘削し、反射板を奈落ピット(深さ16m幅21m奥行10m)に格納する迫りシステムを導入。一方、空間に余裕が生まれたフライタワーには、照明や吊物を増設。掘削工事で、不忍池の水が入ってくるなど大業の改修だったそうだが、つねに最高水準の公演を誘致する東京文化会館では、このような改修・設備更新をくり返し、劇場機能をアップデートしている。

舞台天井(ぶどう棚)高さ27.5m、バトン49本(1本900kg耐荷重)、ライトブリッジ5基。

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バックステージで活躍する、歴史を刻んだ檜舞台

リハーサル室の床板には1998年まで大ホールで使われていた舞台床を再利用。オペラ・バレエ練習用、オーケストラ・コーラス練習用の2室あり、いずれもスタインウェイのフルコンサートピアノ常設。内側に傾斜をつけた側壁で、平行平面によるフラッターエコーを低減。

下手袖に直結した地下1階に、大・小ホール共通の楽屋エリアがある。同じフロアに楽屋が集約していることで、機能的かつ情報伝達がスムーズ。大ホール楽屋は、指揮者やソリストが使う個室6室、中・大部屋の楽屋7室、控室2室とスタッフルーム3室を用意。

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発見がいっぱい、星空のロビーと森のレストラン

前川國男の名建築として知られる東京文化会館は、会場の中が「家」、 会場の外が「庭」というコンセプトで、エントランスロビーからホワイエにかけて公園の一部として設計されている。木目のついた柱は木立、床のタイルは落ち葉、天井は星が瞬く天の川をイメージ。建物内外いたるところに、建築の工夫や造形美、遊び心を発見できる。

エントランスロビーは開かれた都市の広場。同様に、レストランも劇場の重要なポジションとして捉え、いちばん見晴らしの良いところに設置。

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日本と世界をむすぶ芸術文化の「玄関口」

東京文化会館は、憧れの殿堂であるともに、「音楽への入口体験から本格鑑賞、演奏への橋渡し」を活動方針に掲げている。

2003年から毎年開催している「東京音楽コンクール」では国籍・居住地を問わず、可能性に富んだ新人音楽家の発掘と育成・支援を行い、コンクール入賞者にはリサイタルやオーケストラとの共演など出演機会を幅広く提供。

上野駅公園口改札を出てすぐ。ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館と呼応するように向かいあい、諸芸術が交流する文化センター「上野文化の杜」のウェルカム・ロードとなって、国内外から訪れるさまざまな人びとを迎えている。

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所在地:台東区上野公園5-45 上野駅からのアクセス周辺駐車場公式サイト

※このページはライブウォーカーによる企画・取材・編集コンテンツです。当サイトは東京文化会館および台東区、公演主催者、スポンサー等とは関係ありません。また、敷地内の写真は許可を得て撮影しております。画像・文章の無断転載等は禁止いたします。

MUSIC-MDATA編集部(取材日 2019年3月)

魅力探索ガイド一覧(バックナンバー)

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音楽資料室
東京文化会館4Fに1961年10月に開設された、音楽専門の図書館。クラシック音楽を中心とした所蔵資料を無料で閲覧・視聴できる。都内で活動するアマチュア演奏団体にはオーケストラ・パート譜の館外貸出も行っている。
1.デモンストレーション
ホワイエから大ホール客席へ。オペラカーテンが開くと、音楽とともにバトンや照明のステージデモがはじまる。各班に分かれて1時間半のツアー開始。
2.オーケストラピットの秘密
オペラやバレエで楽団員が演奏するスペース。床を昇降させて深さを調整。指揮者が見やすいよう指揮台の後壁だけ白く、正面には指揮者モニターカメラ。
3.バトンと照明ブリッジ
デモンストレーションで見たバトンの動きや照明の仕掛けを実演付きで解説。幕類を吊るバトンは49本。位置や速度はコンピューター制御で操作。
4.歴史を物語るサインの数々
世界各国のアーティストや楽団の直筆サイン、公演当時の貴重なポスターを見学。舞台裏の壁や柱は半世紀を越えるサインで埋め尽くされている。
5.楽屋、リハーサル室、ピアノ庫
舞台袖から楽屋エリアに入場。楽屋3・4はオペラ・バレエの衣裳作業室を兼ねていて、海外歌劇団のツアーでは洗濯機の持ち込み使用にも対応。
6.照明スポット操作体験
明るいサーモンピンクの階段を上がって5階席へ。フォロースポット室からスポットライトを当ててみる。技術修練に少なくとも3~4年はかかる技だ。
7.お助けプロンプターボックス
プロンプターボックスとよばれる80cm四方の切り穴に入って、公演中ずっと、歌手に歌い出しの合図を送る。黒い箱を被せるため客席からは見えない。
8.ツアーの目玉、カーテンコール
出演者全員で舞台挨拶するカーテンコール、ソリストが緞帳を割って登場する緞前(どんまえ)、カーテンを後ろに引くスタッフ係の3パターンを体験。
9.迫力の反響板設置の実演
奈落の格納ピット(深さ16m)に収納された重量90トンある音響反射板一式がゆっくりと表舞台に姿を見せ、オペラ舞台からコンサート舞台に転換。
サウンドペディア
国立西洋美術館
上野公園に1959年に開館した、西洋美術専門の国立美術館。本館は近代建築の巨匠ル・コルビュジエ設計、新館は前川國男設計。前庭にはロダンの彫刻作品が並ぶ。国の重要文化財指定(2007)、世界文化遺産に登録(2016)。
不忍池(上野公園)
上野恩賜公園と動物園に広がる周囲約2kmの天然池。弁天島を中央に蓮池、ボート池、鵜の池からなる。都内中心地にありながら、漕ぎボート、野鳥観察、鯉や蓮の鑑賞が楽しめるレジャースポットとして親しまれている。
上野駅(台東区)
明治16年創業の「北の玄関口」。JR東日本の新幹線や東北本線、高崎線など在来各線と東京メトロが発着。鉄道マニアも唸る日本屈指の巨大ターミナル駅。休日の駅周辺は動物園ほか上野公園施設へのレジャー客で賑わう。