LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.82

MUSIC BAR 音STAGE

MUSIC BAR音STAGEについて

神田駅西口商店街に2017年6月オープン、だれでも気軽に飛び入り、参加OKの「楽器弾(で)きるBAR」がコンセプトのオープンマイク・ステージ開放形式の音楽バー。店内にはギター、ベース、ドラムセットやキーボードなど充実の楽器を揃え、弾き語りからバンド演奏、お客さま同士のセッションなど、ジャンルレスに思いのままに音楽を楽しめる。奏でる楽しさ、音楽を楽しむきっかけを提案する音STAGE。ミュージックバーならではの飲み放題付きレコーディング貸切プランも登場。

MUSIC BAR音STAGEへのお問い合わせ
神田音STAGE公式サイト
千代田区内神田3-7-4 香文堂ビルB1
TEL:03-3527-1909
営業時間:18:00〜23:30 / 定休日:日・祝日

ライブバーの中の人に話を聞いてみた〜 MUSIC BAR音STAGE 編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

MUSIC BAR 音STAGE 店長 山田純也氏

本日は神田のMUSIC BAR音STAGE店長、山田純也さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか?

2017年6月24日のオープンです。オーナーが音楽のあるお店をやりたいということで、店舗のオープニングから携わっています。

オーナーさんは音楽関連のお仕事の方なのですか?

いいえ、音楽関連とは無関係の人です。ロックが好きで「フォーク酒場」のようなお店をやりたいと思っていたそうです。オーナーの理想のお店を作るため、とある縁から現場の経験のある私に話がめぐってきたんです。

山田さんは以前から音楽関係のお仕事を?

私は下北の屋根裏で最後の店長をやっていました。

伝説のライブハウス下北沢屋根裏の店長だったのですか?

まあ、有名な箱でしたよね(笑)。屋根裏には10年くらいいました。屋根裏に出演していたバンドの中に、オーナーの会社の社員がいまして、そんな縁から僕を紹介してくれて、音STAGEの立ち上げに参加しました。

元屋根裏の店長ということで、運営ノウハウはご存知ですもんね。

店長と言っても、引き継ぎの店長だったので、いわゆる店の立ち上げからの経験はありませんでした。ライブバーとライブハウスはまったく別物ですので、おもしろそうなお話だなと、興味本位だけで取り組んできたようなものです(笑)。

誰でも参加できる、本当の意味でのオープンなセッションが楽しめるお店

〜楽器弾(で)きるBAR〜ということですが、音STAGEのコンセプトについて教えて下さい。

「飲みに来たお客さんがだれでも演奏できる店」です。いわゆるライブハウスやライブバーとは明確に差別化しているポイントです。オーナーが通っていたという「フォーク酒場」では、このような手法でやっているお店が多かったそうで、そのあたりを参考にしました。

ライブハウスやバーでも「セッション」や「オープンマイク」はやっていますよね?

ライブハウスやライブバーではセッションと謳っていても、結局はブッキングや、お馴染みのメンバーでの演奏がメインになっているところが多いですよね。うちでは、お店に来れば、例外なく誰でも参加できる、本当の意味でのオープンなセッションが楽しめます。

演奏したくなったら、いつでも誰でも参加していい?

基本的には歌う人がいて、そこに演奏できる人、演奏したい人が参加していきます。言うなれば、お客さん全員が演奏しに来ているようなものですね。もちろん、お客さんとして来店されたミュージシャン同士がセッションするような場面もあります。

なるほど、それで店内には豊富な楽器を常備しているのですね。

はい、自分たちで選んだ楽器を揃えていますが、中には常連さんが置いていった楽器もあります。

ぶっちゃけると「これはおもしろい!」です。手応えありまくりです。

変動の激しい音楽業界ですが、オープンしてからの手応えはどうですか?

ぶっちゃけると「これはおもしろい!」と思っています。手応えありまくりです。メインの客層としては、趣味でバンドをやっているサラリーマンの方や、「自分の楽しみ」として音楽を続けている方が多く、音楽業界全体のお客さんが減ったり、バンドそのものが減ったり、という話とは無関係のところで盛り上がっています。

自分が楽しむために演奏できるお店、という需要は多そうですね。

神田がオフィス街というのもあると思いますし、年齢の幅も広く、20歳代から80歳代くらいの方が一緒に演奏されています。僕自身も知らなかった、オールディーズとかカントリーとかを演奏するご年配の方もいらして、音楽の深さを体感できます

屋根裏から音STAGEまで、同じライブの現場でも、全く違ったベクトルがみられるのは興味深いです。

そうですね、ライブハウスに10年、いろいろと関わってきましたが、ライブの楽しみ方は多様だと発見できました。屋根裏時代に関わっていた方も来てくれたり、そこに会社帰りのサラリーマンが寄ってきて、双方が融合したり、いかようにも変化、進化します。

この先、お店や音楽シーンを盛り上げるアイデアや取り組んでいることがあれば教えて下さい。

音楽シーンという大きな話になると、ビジネス的な要素も関わってくるので、正直、私にははっきりとはわかりません。お店のことに関しては、常に考えています。といっても、どれが正解かわからないので、試しながら実践しています。言えることは、音楽と深く関われるきっかけを提供していくということです。

音楽を楽しめる場所を増やす、ということですか?

場所を増やすというより、もっと気軽に楽しめる機会、きっかけ、そういった意味合いです。音楽を楽しみたい人は確実にいます。そんな人たちが楽しめる場がもっと増えたらいいなって思います。

興味はあるけど、あまり上手じゃないから…と、あと一歩を踏み出せない方もいると思います。

うちは気の張らない、気楽さも特徴です。いわゆるセッションバーで演奏するとなると、ちょっとハードル高いじゃないですか? 演奏レベルなど気にせず、もっと参加しやすい環境があれば、音楽との接点がもっと深まるはずです。

確かにセッションに慣れていないと、なかなか入りにくいお店もあります。

ライブバーの弱点はそこだと思います。先程も言いましたが、フリーセッションといっても実際は常連さんを中心に盛り上がっているだけ、という所も多いですよね。

だれでも気軽にセッション参加出来る、気の張らない気楽さが特徴

同感です。私も常々そう思っていて、以前そんなこともコラムに書いてしまっていました。

共感していただいてうれしいです(笑)。でも、これ、みなさん本心の部分で思っていることだと思いますよ。今までのセッションの形というのが、お客さんに根付いて頂くのはありがたいことですが、初めてのお客さんも、気軽に一緒に参加できるように、このお店ではそういう壁をとっぱらっていきたいですね。

音STAGEをきっかけに、音楽のある日常がより深まっていきそうですね。

それがビジネスになるかは別の話かもしれませんが、身近に音楽を楽しむ人が増えることは、回り回って音楽業界にもプラスにもなると思います。

それでは続いて、山田さんと音楽の出会いを聞かせて下さい。

高校の時、ドラムをやっている同級生がいて、教室の席が近かったことから「バンドやろうよ」と誘われたんです。そのとき僕はギターを持っていないし、弾くことも出来なかったわけですが、とりあえず始めてやっていくなかで、のめり込んでいましたね。

どういったバンドですか?

最初はもちろんコピーバンドです。ボーカルが女の子だったので、リンドバーグのコピバンをしていました。

リンドバーグ! 確かこのシリーズ取材で初めて挙がったバンドです。

ドラマーの同級生はブルーハーツが好きだったのですが、ボーカルが女の子でしたので(笑)。

そのバンドを通して、演奏する楽しさを知った?

そうですね。僕個人としても、それからギターに目覚めてしまって、当時、音楽情報はラジオで仕入れていましたが、いつも通り、J-POPの番組を聴いていたら、美しい洋楽のロックバラードが流れまして、即座にアーティスト名をメモって、CDを買いに行きました。でも、アルバムを開けて聴きはじめたら、とんでもない速弾きのハードロックのオンパレードで、「なんじゃこりゃ!」と(笑)。

ロックバラードからの速弾きというと、まさか、イングヴェイ…?

その、まさかのイングヴェイ・マルムスティーン。何を間違えたのかイングヴェイのCDを買ってしまって(笑)。でも、せっかく買ったから、と聴いているうちに、だんだん心地良くなってきて、これ弾いてみたいなあ…と思うようになりました(笑)。

イングウェイ、速弾き…、練習に明け暮れる日々の始まりですね(笑)。

はい。1日中ギターを弾いて、それ以外のものは全て放棄していた時期がありましたね(笑)。その後、専門学校に進学して、同時にギターの仕事もちょいちょいもらえるような感じになっていました。

ギターのお仕事となると、さすがに速弾きの出番はなさそうです。

全くありません(笑)。ギターの初仕事はジャズ、ボサノバポップス系で、コードを見たら「13」とか、見たことのない数字が書いてあって、「こんなん知らんわ!」ってね(笑)。

専門学校卒業後はプロの道へ?

大阪を拠点に活動していましたが、本格的にやるなら上京しようということで、卒業後は、東京でバイトをしながらバンドを始めました。

上京するきっかけは何だったのですか?

当時よくあった展開ですが、メジャーレーベルが 「いいボーカルがいるからメンバーを集めて企画的なバンドを出そう」ということで、そのバンド要員として呼ばれました。案の定というか、そのバンドはすぐ終わってしまって、それから自分のバンドをやり始め、インディーズバンドとして活動していました。

そのバンド活動が下北沢屋根裏へとつながる?

はい、自分のバンドが解散するタイミングで、当時よく出演していた屋根裏の店長に誘われまして。時給も低かったし(笑)、悩みましたけど、まあ、流れ的な要素も大きいですね。屋根裏に入って、1年くらいでその店長が辞めちゃったので、僕が引き継いで10年、そして、音STAGEのオープンに至ります。

プレイヤー、そして名門ライブハウスの店長としての経験が今(音STAGE)につながるのですね。それでは最後に、音STAGEからメッセージをお願いします。

音楽が好きな人、大歓迎です。演奏される方はもちろん、楽器が弾けなくても、歌うのが好き、聴くのが好き、そんな方たちにもぜひ1度来ていただきたいです。絶対に楽しいお店です!

だれでも身近に気楽に演奏を楽しめる、ライブバーの発展性を感じる取材でした。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2018年4月)

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浪曲『石松三十石舟道中』のセリフ、「江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」で知られる東京の下町。JR山手線・中央線快速・京浜東北線、東京メトロ銀座線が乗り入れる「神田駅」は首都東京の表玄関「東京駅」の隣にありながら、昭和的な懐かしさが残るまち。駅前はコスパの良い居酒屋・飲食店がひしめく飲み屋街で、平日の夕暮れ時になれば、仕事帰りに一杯やろうとスーツ姿のサラリーマンで賑わう。