ライブウォーカー バンドマンに捧げる不定期コラム

本日をもって解散します<解散四回目>

『飽きちゃった

 

2016年最初のコラム『本日をもって解散します』も今回が最終回となります。前回前々回と、なんだかんだ、お金の話ばかりになってしまいましたが、最後は少し視点を変えてみましょう。

 

今回の解散理由は、ずばり『飽きちゃった』。これを言ってしまったら身も蓋もないのですが、実際にあることなのだからしょうがない。

 

『飽きる』。これは、プロアマを問わずに高確率で起きる現象です。そりゃ何年も同じこと続けてりゃ、飽きることなんて山ほどあります。人生も中盤にかかると、恋愛ですら飽きちゃうのもザラ。人間の本能的な行為ですら飽きちゃうんだから、練習とコミュニケーション能力を要するバンドなんてものは、そうそうやってられるものではありません。

 

 

そもそも、この豊かな日本、音楽以外にも楽しいことは無数に存在します。他に楽しいことが見つかったから音楽はもういいや、なんて可能性は大いにありえます。

 

しかも、人間、年を重ねると、快楽や刺激よりも、生活の安定に幸せや楽しみを見い出してきます。子供でも出来ようものなら、『子供 >>> 音楽』になるのは当たり前のことですし、そうでないと、ある意味恐ろしい。あのレッド・ホット・チリ・ペッパーズのベーシスト、フリーさんですら、『娘のためならいつでもバンドをやめられる』と断言していますからね。

 

大切なものの優先順位が変わってくるんだよな…。(某ライブハウス店長談)

 

多大な消耗と浪費を伴う音楽活動であったなら、それは、家庭のためにも、「手放すものの第一候補」ともなりうるでしょう。(ああ、結局お金の話だ…)

 

 

ただ、音楽というやりがいを手放したことにより、心にポッカリと穴があいてしまう人も少なくありません。これも、初回のコラムで書いたように、バンド活動の目的が明確になっていないことが招く寂しい現実の一つなのです。

 

ここからは、プロを目指しているバンドの話になりますが、この音楽大恐慌時代、「曖昧なプロ志向」が一番の痛手を被ることとなります。

 

曖昧なプロ志向での音楽活動においては、いつまでたっても「プロの厳しさ」という洗礼をうけません。その結果、「いつか花開く」という希望を抱き続けられます。これらは当然のごとく、『飽きる』という気持ちも出てきません。これって、負け続けるギャンブルやっているのと変わらないのですよ。

 

音楽で食べていくということは自分というブランドを売ること。自分自身が経営者でなければならない。経営で失敗すれば食えなくなる、という現実は避けて通れません。

 

なので、雇用の少ない音楽業界おいて、中途半端な姿勢のまま活動を続けてしまうと、年老いてから、やりがいや生きがいを失ってしまうという残酷な現実にぶち当たる確率が相当に高いのです。

 

 

バンド活動の目的が明確ならば、厳しい現実にぶちあたれば、適切な時期に『飽きちゃった』という気持ちも出てくることも考えられます。ここでの『飽きちゃった』という気持ちは、アナタのやれることは他にも沢山ありますよ、という報せなのだとワタクシは思うのです。

 

自分の可能性や幸せを、闇雲に音楽にしがみつくことで失ってはいけません。こう考えると、バンドの解散を決意するということは、かならずしもネガティブなことではないと思うんです。

 

って…、これ、いつの間にか解散をすすめる話になってないかい?

 

えー、今回のコラムを読んで解散を決意してしまった方達の責任は一切負いかねます。このコラムのせいでどうしてもバンドを解散させたくなってしまった場合は、『音楽性の違いにより、本日をもって解散します』とでも言っておいてください!(←便利な言葉だね)

 

〜おしまい〜

 

<本日をもって解散します>

<解散一回目>「音楽性の違い」(2016年1月13日公開)

<解散二回目>「THE・金の問題」(2016年1月20日公開)

<解散三回目>「バンド内収入格差」(2016年1月27日公開)

<解散四回目>「飽きちゃった(2016年2月3日公開)

 

 

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企画&ライター 浅井陽 - イラスト担当:こむじむ